Up | 原点回帰論作法 | 作成: 2015-04-10 更新: 2015-04-14 |
生活は「向上」が当為になる。 なぜか? この社会は,商品社会である。 商品生産は,「向上」を以て,持続する。 こうして,商品社会は「向上」をつくり出し続けねばならない社会である。 「向上」は,機能性の向上である。 家は,「雨露をしのぐ」から向上しなければならない。 食事は,「空腹を満たす」から向上しなければならない。 交通は,「歩く・走る」から向上しなければならない。 勉強は,「読み書き」から向上しなければならない。 「向上」の内容は,「道具を増やす」である。 「道具獲得にコストをかける」である。 (2) 「身一つ」の退化 実際,「向上」は,人を道具を身に纏った様でしか生きられない者にする。 身一つでは何もできない者にする。 (3) 「原点回帰」の思い それはたとえば,電卓を無くして,自分が計算のできないことに気づくときである。 冬に電気がとまって,自分が暖房の術を持っていないことに気づくときである。 交通機関がとまって,自分がろくに歩けないことに気づくときである。 道具獲得にコストをかけることが「身一つ」を進化させることに何も貢献していないこと,「身一つ」をただ退化させていること──この意味での「向上」の無内容──に気づくとき,ひとは「原点回帰」を思う。 「原点回帰」の意味は,「身一つ回帰」である。 「原点回帰」の表現では,「向上」は「虚飾」になる。 実際,「身一つ」の視点からは,「向上」は「虚飾」である。 (4) 「原点回帰」の主張は,マナー違反 この社会は,「向上」を「虚飾」と言ってはならない社会である。 この社会は「向上」をつくり出し続けねばならない社会だからである。 「向上」を絶対善とすることが,マナーになる。 マナーは,道徳になり,無意識になる。
現役で属している組織は「向上」で一致団結する組織であり,そして組織の員であるとは組織を乱すようなことを自ら憚るということだからである。 (5) 個人と組織 一般に,組織として立つことは,他の組織と競合関係で立つことである。 商品社会の場合,「競合」の内容は「向上を競い合う」である。 一般に,組織の存在条件は「条件充足のシステムがつくられる」に現れる。 「向上を競い合う」の条件を充足するシステムは,組織に「向上」を貫徹させるシステムである。 このシステムは,「統率者と従事者」の形になる。 統率者は,従事者に「向上」の課題を与えるのが役割である。 従事者は,この課題を遂行するのが役割である。 個において,「原点回帰」を思うことと「向上」の役割行動は,互いに独立である。 「原点回帰」を思って「向上」の役割行動をすることは「意に反することを行う」であるが,系において個が生きる形はもともと「意に反することを行う」である。 ──これを論じるのが,「疎外論」である。 (6) 「向上」の先は「絶滅」 コストをかけないと生活できないカラダをつくっていくことである。 「向上」は,いつまでも続かない。 高コストな生き方が許されない時節が,やがて来る。 そのとき,種は「絶滅」する。 これは,生物の進化のならいである。 種の繁栄は,高コストな生き方を発達させることである。 そこに,環境が変化する。 高コストな生き方が許されなくなり,種は絶滅する。 これに変わり,これまで低コストな生き方をしてきた種が,主役にのし上がる。 この種は,繁栄の道を歩み出す。 それは,高コストな生き方を発達させる道,絶滅への道である。 こうして,繁栄種の交代が繰り返される。 良い悪いの話ではない。 ただの科学的事実である。 |