Up 前衛イデオロギー 作成: 2013-03-23
更新: 2013-03-23


    吉本隆明は,革命イデオロギーの「大衆」の概念を踏襲する者である。
    「大衆」を立てる者は,「大衆」の外に自分を立てる者である。
    「大衆」の外に自分を立てることに肯んずる者は,「前衛」である。
    吉本隆明は,「大衆」を立てることで,自身を「前衛」にする者である。

    前衛は,自分のイデオロギーに「大衆」を回収しようとする。
    異なるイデオロギーの前衛は,「大衆」回収において,衝突する。
    なわばり争いになるわけである。

    「パルタイ」批判で,吉本隆明はこれを演じる。
    吉本隆明は,そこでは前衛イデオロギーの者である。

    時代は,革命的前衛イデオロギーが一つのファッションであった。
    それは,インテリジェンスのファッションだったのである。
    ファッションは,後になって振り返るとき,ファッションであったことがわかる。 そのときファッションの中にいる者は,ファッションを<これが自分の進む道>にしてしまう。

    その後の時代の変化は,前衛イデオロギーを完膚無きまで陳腐化する。
    いまは,「大衆」を立ててこれの外に自分を立てようとする者はいない。
    しかし,吉本隆明は,「大衆」を引き摺ることになった。
    わたしはここに,<引っ込みがつかない>を見てしまうのである。