Up 違和感の契機: 成長, 時代/情況 作成: 2013-03-14
更新: 2013-03-15


    「吉本隆明」とは,習慣に対する違和感から《自分の他は習慣に従順な者たちである──自分は他とは違う》の自意識に進む者のことである。

    習慣は,大人の世界である。
    子どもから大人への成長過程で,習慣が外からやってくる。
    それは,自分の都合ではない。
    自分の都合ではなくて外からやってくる──それは不条理である。
    習慣は,不条理である。
    こういうわけで,習慣に対する違和感の最も自然な契機が,成長である。

    習慣の内容,そして成長過程でその習慣が外からやってくるタイミングは,「時代/情況」の内容である。
    この意味で,時代/情況は,習慣に対する違和感の契機である。

    「吉本隆明」は,習慣に対する違和感の決定的な契機に時代/情況がなっている場合である。


    「成長」「時代/情況」のことばを用いて以上述べたことは,つぎの一節の解説である:

     「 このような自己資質は、少年のある時期に〈書く〉ものにとっても〈書かない〉ものにとっても共通のもので、したがって文学とはかかわりのないものである。 文学は、あきらかに習慣の世界が心を占有したときに、はじめて完全にはじまる。 そして、人はだれでも自己資質の世界が喪失する過程よりも、〈書く〉という習慣の世界がかろうじて早くやってきたとき表現者になり、ややおくれてやってきたとき表現者でないのではないか? 」 (p.654)