Up 間伐林 作成: 2025-03-16
更新: 2025-03-16


    林には,自然林と人工林がある。

    人工林は,間伐林である。
    ()やす木を定めて,その他を除去する。

    間伐は,生やす木に対しても加えられる。
    即ち,横に拡がる枝は,剪定する。
    本来,竹箒のように拡がるミズナラも,カラマツのように幹が真っ直ぐに伸びる形に矯正される。
    こうして間伐林は,「棒が立ち並ぶ」がこれの眺めになる。


    間伐は,灌木を切り払い,生やす木を間引きすることで,地表に日が差す。
    そこは,ミヤコザサで占められるようになる。
    また,人道の脇は,フッキソウが生えるところになる。
    実際,間伐林は,間引きで残った木とミヤコザサ・フッキソウの単純相になる。

    ミヤコザサとフッキソウが生えていられるのは,背が低いからである。
    ──間伐林では,背が高くなるものは刈られ,伐られる。
    ミヤコザサとフッキソウは,「林のタンポポ」といったものである。
    タンポポは,人間が更地にしたところでしか生えられない。
    人工あってのものなのである。


    間伐林は,木の自然更新が無い。
    幼木は,エゾシカに食べられるからである。

    エゾシカにとって,間伐林はサバクである。
    幼木の他には食べるものが無い。
    間伐はエゾシカの食べ物を無くしているわけであるから,ここはエゾシカを恨むところではない。


    間伐林は,植生が貧困なので,蟲も少なく,したがって鳥も寄って来ない。
    間伐林に寄りつくのは,弱った木を餌や棲処とする生き物と,その類の蟲を餌にするキツツキ。

    また間伐林は,害虫 (マイマイガの幼虫の類) の大発生が起こりやすい。
    生態系が貧困なので,爆発的事態に対する抑制機能──バランス機能──が無いというわけ。
    これも「間伐の予定のうち」となるわけなので,害虫を恨むところではない。


    自然の林は,気味が悪く,恐る恐る入って行くところである。
    魔物が出て来やしないかと,ドキドキして周りに目を配って歩く。
    そこに,樹木の色々な種,樹木の色々な相との出遭い・学びがある。

    間伐林は,「ドキドキして周りに目を配る」とは無縁のところである。
    しかし人にとっては,これが却って良い。
    間伐林の特徴である「植生・生態系の貧困」も,「人が入りやすい林」の意味になる。
    「植生・生態系の貧困」による「見るところが無い」も,「沈思黙考・瞑想に格好の場」の意味になる。


2025-03-15