Up 「大学院定員割れ」の実際 作成: 2009-02-13
更新: 2009-02-13


    「法人化」の国立大学は,いま大学院の3次募集に動き出している。 大学院の定員割れ問題への対応というのが,3次募集の位置づけである。
    3次募集は,大学にとって<破格>行動である。 <破格>までもち出して対応しようとしている「定員割れ」問題とは,実際のところどんなものなのか?
    先ずはこのところを押さえておく必要がある。

    ここ数年の国立の大学院入学者数の推移を見てみよう。
    教育分野の修士課程では,つぎのようになっている:

    年度 入学志願者 入学者
    2002 8078 4606
    2003 7682 4521
    2004 7861 4547
    2005 7887 4719
    2006 8074 4705
    2007 8071 4652
    2008 7495 4172

    数値は,文科省『学校基本調査報告書 (高等教育機関 編)』 「大学院専攻分野別入学状況」の<修士課程・教育・国立・[入学志願者 - 入学者]>から

    この表が示すことは,つぎの2つである:
      1. 2008年度に,急な落ち込みが起きている。
      2. それまでは,ほぼ横ばいの状態。

    「定員割れ」は,漸減傾向の結果として現れているのではない
    問題は,2008年度の落ち込みの意味である。
    この落ち込みが構造的なものなら,この数字が以降も続く (漸減傾向に進む) と見ることになる。


    2008年度の落ち込みの意味を特定するためには,いまは材料が決定的に不足している。 2009年度の数値,およびそれ以降をしばらくみていく必要がある。
    いまできることは,「この間何か変わっていることは?」を考え,そしてこれを視点にして問題解釈のフレームがつくれそうかどうかを考えるということである。

    この間何か変わっていることは?」を考えてみると,つぎのものが挙げられてくる:
      1. 教職大学院
      2. 大学院再編の動き

    教職大学院は,2008 (平成20) 年度からの開設であり,2008年度入学状況はつぎのようになっている:

    年度 入学志願者 入学者
    2008 695 522

    数値は,文科省「平成20年度教職大学院入学者選抜実施状況の概要」の<国立 (15大学)>から

    上の2つの表の2008年度の数値を足せば,例年並みを少し超える数値になる。
    教職大学院の数値は,初年度ということで,各大学が相当努力してつくり上げたものである。 これを勘案すれば,例年並みの数値になる。

    では,これまでの大学院入学実績が従来型大学院と教職大学院の入学実績に分かれ,今後この形で安定する──となるのか?
    問題はそんなに単純ではない。
    「二兎を追う者は一兎をも得ず」のモーメントを計算しなければならない。
    各大学の問題としては,地域性も要素として絡んでくる。