Up 箱物の細部指導──中央統制傾向に嵌る 作成: 2008-06-01
更新: 2008-06-01


    行政の「改革」施策は,現場の迷走を生みだす。
    迷走は,「改革」施策にとびつく者・受け身な者の両方で起こる。

    この迷走を見た行政は,「自分たちがさらに細かく指導していかねばならない」という考え方をする。
    それは,「最初に与えた箱物に,さらに細かい仕切りを入れていく」ということである。


    つぎは,本日 (2008-06-01) の読売新聞朝刊のトップ記事

    法科大学院の底上げ検討、必須科目の拡充を軸に
     司法試験の合格者数増加に伴い、法曹の質の低下が懸念されている問題で、政府は法科大学院で教える最低限の内容を示す「コア・カリキュラム」策定の検討に入った。
     法科大学院ごとに異なる教育内容の大部分を共通化し、教育の質を保証し向上させようとするものだ。中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)で検討を進め、今後2年間で結論を出す方針だ。
     法科大学院のカリキュラムは、文科省の省令などで、取得する単位数の下限や「法律基本科目」、「展開・先端科目」などについて授業を開設することが定められているが、細部は各大学院に任せられている。
     司法制度改革で法科大学院の設置が決まった際、修了者の7〜8割は司法試験に合格することが理想とされたが、昨年の新司法試験の合格率は全体で4割にとどまった。個別では最高の千葉大法科大学院でも約65%で、一けた台の学校も目立った。教育内容が水準を満たしていないなどとして大学などの評価を行う独立行政法人「大学評価・学位授与機構」などから「不適合」とされた大学院は5校に上り、評価を受けた24校の2割を超している。このため、日弁連など法曹関係者から、コア・カリキュラムの策定を求める声が出ていた。
     これを受け、中教審が今年3月に「法科大学院の教育の質の保証に関するワーキング・グループ」を設置。法学者や弁護士、裁判官らが検討を進める。
     大学の医学部と歯学部には文科省が策定したコア・カリキュラムが2001年から導入されている。ワーキング・グループでは今後、医、歯学部の状況を参考に法科大学院のコア・カリキュラムの概要やカリキュラムを新司法試験の出題範囲と連動させることなどについて検討する。医学部のコア・カリキュラムは全カリキュラムの約3分の2の分量を占めており、法科大学院の議論でもこれを参考にする。

    国立の教員養成系大学・学部では,これに類する問題に「教職大学院」がある。 すなわち,
      現職教員のグレードアップのためには,教職大学院だ
      教職大学院をやれば,現職教員のグレードアップになる
    調で,「教職大学院」の制度が開始された。

    「法人化」の国立大学の大学執行部は,
      これは生き残りの要(かなめ)だ
      すばやい対応がいちばん
    調で,「教職大学院」にとびつく。
    そしてこれを立ち上げるや,迷走を始める。
    はじめから分かり切っているところの内在する問題を,始めてしまってから考え出す。

     註 : ただし「改革」のバブル時代には,「先ず始める」「走り出してから考える・走りながら考える」がよい意味のことばになる。 ──バブル時代が自分の失敗とともに終わるとき,これは<粗忽>として後悔される。


    しかし,「迷走」の筆頭主題ということでこの時期に挙げるものは?となれば,なんといっても「教員免許更新講習」。 ──「教員免許更新講習」とは言えないもので溢れかえることが,目に見えている。 ( 教員免許更新制と更新講習)

    この現場の迷走を見ることになる行政は,どうするか?
    講習のコア部分を定めるという作業に入る。
    しかし,コアを定めるということは,コアの内容ができるということではない。 「教員免許更新講習という箱に,仕切りを一つ入れる」だけのことである。

     重要 : 「教員免許更新講習」は,実質的なものにはならない。 これは,講習する側の能力不足とかサボタージュといった問題ではない。 メートル四方の敷地に百人を突っ込むという類の,計算的に無茶なことをやっているのである。