Up 大学教育の商品化における商品構造 : 要旨 作成: 2009-05-10
更新: 2009-05-10


    「法人化」の国立大学の一角に,「新入生の既修得単位振替認定」の動きが現れる。 編入生の既修得単位振替認定を新入生に対してもやろうというわけである。
    一見どうということのなさそうな動きであるが,「大学教育」研究の視点からは,
      「<大学教育の商品化>の項目に,新たに<単位の商品券化>が加わる」
    という画期的な出来事になる。

    この内容を原理論的に展開しようとすれば,それはおおよそ以下の形になる。

    1. 「新入生の既修得単位振替認定」が制度化されることにより,単位は<商品券>のようになり,「蓄財」できるものになる。
      この<商品券>を使うのは,学位や資格を買うときである。 しかも,永久使用できる。
      あわせて,<商品券の通用する商圏の構成店>が大学の意味になる。

    2. ただし,「新入生の既修得単位振替認定」だけでは,単位の<商品券>としての使い勝手は悪い。 使い勝手をよくするためには,「早期卒業」や「飛び級」の制度の併用が必要になる。
      実際,いまは,「早期卒業」や「飛び級」の制度を採用している大学が,「進んだ大学」と思われている。 「法人化」の国立大学は,つぎはこの制度の導入に進む。

    3. <商品券>となった単位の論考は,経済学の貨幣論の応用のようになる。
      貨幣の条件の一つに,内容の無意味化がある。 実際,「単位が<商品券>になる」には,「学習内容を問わない」が含意される。
      授業は一つ一つユニークであり,交換できない。 単位を<商品券>にするためには,授業を「同一・交換可能」なものにしなければならない。 これをする方法は,「授業内容を問わない」である。

    4. 翻って,各大学の授業者は,授業を「内容を問われることのない授業」として行う者になる。 ──これは,労働疎外論の主題に他ならない。