Up 競争主義が横並びラインを押し上げる 作成: 2008-02-16
更新: 2008-02-17


    国立大学の「法人化」では,国立大学の横並びが重要な力学的要素になっている。

    国立大学は,「大学評価」のために,「改革」を行う。
    「大学評価」で低い点数をつけられることを恐れるという意味で,「改革」で遅れをとることを恐れる。
    互いに遅れをとるまいとすることで,国立大学の横並びがつくられる。

    国立大学のこの横並びの力学では,成果主義に競争主義 (「よい点数」を狙おうとするモーメント) が合わさる。
    ある大学が少し突出する。
    しかし,他がすぐにこれに追いつく。
    この力学的運動が,横並びラインを押し上げる。

     註 : 成果主義とは,点数をとらせる試験問題をつくること (これだけのこと) である。
    試験によい点数をとる方法は「傾向と対策」であるので,「試験の点数で少し突出する者が出ては,つぎには追いつかれる」が繰り返される。
    ちなみに,成果主義のもとでは,「成果が点数になる仕事」が「仕事」の意味になるので,成果が点数にならない仕事がないがしろにされる。 これが,「成果主義は本業を壊す」の所以である。


    2008-02-14 の朝日新聞に,つぎの記事が載っている:

    東北大, 「抜群教授」に特別手当 最高月20万円

     東北大学が新年度から,優れた業績をあげた現役教授を「抜群教授」に選び,月給を最高20万円上乗せする。国立大では初めての制度といい,学外から優秀な「頭脳」を獲得するとともにその流出を防ぎ,世界最高水準の大学を目指す。
     正式な称号は「ディスティングイッシュトプロフェッサー」。教育や研究,社会貢献などの業績がきわめて顕著で,将来も中心的な役割を果たすことが期待される教授を任命する。学内から推薦を受けた教授の中から,学外の有識者も含む選考委員会が選ぶ。
     初年度は学内の約800人の教授から3%にあたる25人を選び,月額10万円を基本に最高20万円の特別手当を支給する。東北大教授の年間の平均給与は1101万円(06年度)なので約1割(最高で約2割)の上乗せになる。任期は3年で再任も可能。
     優れた研究成果は所属大学の評価向上につながるため,法人化後の国立大では優秀な研究者の獲得競争が本格化している。東京大は1月,世界的物理学者である村山斉(ひとし)・米カリフォルニア大教授を総長より高給で招き,京都大は昨春,アポトーシス(細胞が自死する現象)の権威,長田重一・大阪大教授を引き抜いた。
     2年目以降の「抜群教授」の人数や給料の上乗せ額は1年目の結果をふまえて決める。東北大の北村幸久副学長は「世界最高水準の大学になるために,称号だけでなく給与という具体的な形を示して,質の高い教員を確保したい」と話している。
    (http://www.asahi.com/national/update/0214/TKY200802140152.html)

    この種の「国立大では初めての制度」が現れると,つぎに国立大学間横並び運動が開始される。

      この記事の別の応用法:「だれかとめてあげないと‥‥