Up 推薦入試が大学教育をダメにする構造 作成: 2008-08-03
更新: 2008-08-03


    「法人化」の国立大学は,つぎを命題にする:

      顧客の奪い合い競争に入り,これに勝たなければ,生き残れない。
       顧客が向こうから来るのをただ待っていてはだめ。
       ──自分の方から顧客獲得に出向かねばならない。

    そして,「自分の方から顧客獲得に出向く」形の一つが,推薦入試。


    推薦入試は,大学教育を根底からおかしくする。
    「推薦入試」の論理的含意を挙げてみよう。

    1. 推薦枠を○人にすることは,正規入試合格枠を○人減じること。 すなわち,合格の次点以下○人を不合格にするということである。
    推薦で入れた○人と正規入試で不合格にした○人は,どちらが学生として入学させるのにふさわしいのか?
     
    2. 論理として,学力的に受験合格の難しい学生,受験勉強をしないで済ませたい学生が,高校が推薦してくる学生である。

      要点 : 正規受験学生は,自分の力で希望大学に入ろうとする者である。
    推薦を受けようとする学生は,これをしようとしない者である。

    一般に,受験勉強は,学力を高める。
    そして,受験勉強は,勉学に対する耐性を高める。 ──実際,学生が勉学に対する耐性を高めるのは,受験勉強においてである。
    これを裏返すと,推薦で入ってくる学生は,学力が低く,勉学に対する耐性が弱い,ということになる。 (論点:これは,教育の現場にいる者の実感と合っているか?)

    大学教育は,彼らに照準を当てることを余儀なくされる。
    すなわち,程度を下げる (大学教育の体を成さなくしてしまう) ことを余儀なくされる。
     
    3. 北海道教育大学札幌校は,受験生から文系と見なされている。 すなわち,ここを受験しようとする高校生は,高校では文系コースを選択する。
    札幌校の基礎学習コースの算数グループに入ってくる学生は,このような者たちである。

    彼らは,小学校教員免許の他に,中・高の数学教諭の免許をとろうとする──すなわち,「とれて当然」という考え方をする。
    免許をとるために必要な専門数学の取得単位数は,つぎのようになっている (教育職員免許法施行規則, 第三条, 第四条):

      中学数学 代数学 それぞれ1単位以上,計20単位
      幾何学
      解析学
      「確率論, 統計学」
      コンピュータ
      高校数学 代数学 それぞれ1単位以上,計20単位
      幾何学
      解析学
      確率論・統計学
      コンピュータ

    例えば,代数6,幾何6,解析4,確率·統計2,コンピュータ2ととれば,中・高の数学教諭の免許をとるための専門数学の単位は足りる。

      履修例:
      2年 前期 代数 I,幾何 I,解析 I
      後期 代数 II,幾何 II,解析 II
      3年 前期 代数 III,幾何 III,確率·統計
      後期 コンピュータ

    数学の場合,学生は低い学力で横並びしているのが現状である。 (重要:大学生は,「自学習の時間は僅か」という点でも横並びしている。) よって,個人的資質・能力に余程の問題がなければ,この程度の科目数の単位は取れてしまう。
    そこで,どういうことになるか?

    「高校では文系コースを選択し,大学での数学は低空飛行」の学生が,高校の数学教諭の免許をとってしまうことになる。
    そして,「学力的に受験合格の難しい学生,受験勉強をしないで済ませたい学生」として入ってきた推薦入学者の場合には,この問題は「かなりまずい」レベルにいってしまう。