「法人化」の国立大学は,つぎを命題にする:
「顧客の奪い合い競争に入り,これに勝たなければ,生き残れない。
顧客が向こうから来るのをただ待っていてはだめ。
──自分の方から顧客獲得に出向かねばならない。」
そして,「自分の方から顧客獲得に出向く」形の一つが,推薦入試。
推薦入試は,大学教育を根底からおかしくする。
「推薦入試」の論理的含意を挙げてみよう。
1. |
推薦枠を○人にすることは,正規入試合格枠を○人減じること。
すなわち,合格の次点以下○人を不合格にするということである。
推薦で入れた○人と正規入試で不合格にした○人は,どちらが学生として入学させるのにふさわしいのか?
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2. |
論理として,学力的に受験合格の難しい学生,受験勉強をしないで済ませたい学生が,高校が推薦してくる学生である。
要点 : |
正規受験学生は,自分の力で希望大学に入ろうとする者である。
推薦を受けようとする学生は,これをしようとしない者である。
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一般に,受験勉強は,学力を高める。
そして,受験勉強は,勉学に対する耐性を高める。
──実際,学生が勉学に対する耐性を高めるのは,受験勉強においてである。
これを裏返すと,推薦で入ってくる学生は,学力が低く,勉学に対する耐性が弱い,ということになる。
(論点:これは,教育の現場にいる者の実感と合っているか?)
大学教育は,彼らに照準を当てることを余儀なくされる。
すなわち,程度を下げる (大学教育の体を成さなくしてしまう) ことを余儀なくされる。
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3. |
北海道教育大学札幌校は,受験生から文系と見なされている。
すなわち,ここを受験しようとする高校生は,高校では文系コースを選択する。
札幌校の基礎学習コースの算数グループに入ってくる学生は,このような者たちである。
彼らは,小学校教員免許の他に,中・高の数学教諭の免許をとろうとする──すなわち,「とれて当然」という考え方をする。
免許をとるために必要な専門数学の取得単位数は,つぎのようになっている (教育職員免許法施行規則, 第三条, 第四条):
中学数学 |
代数学 |
それぞれ1単位以上,計20単位 |
幾何学 |
解析学 |
「確率論, 統計学」 |
コンピュータ |
高校数学 |
代数学 |
それぞれ1単位以上,計20単位 |
幾何学 |
解析学 |
確率論・統計学 |
コンピュータ |
例えば,代数6,幾何6,解析4,確率·統計2,コンピュータ2ととれば,中・高の数学教諭の免許をとるための専門数学の単位は足りる。
履修例: |
2年 |
前期 |
代数 I,幾何 I,解析 I
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後期 |
代数 II,幾何 II,解析 II
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3年 |
前期 |
代数 III,幾何 III,確率·統計
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後期 |
コンピュータ
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数学の場合,学生は低い学力で横並びしているのが現状である。
(重要:大学生は,「自学習の時間は僅か」という点でも横並びしている。)
よって,個人的資質・能力に余程の問題がなければ,この程度の科目数の単位は取れてしまう。
そこで,どういうことになるか?
「高校では文系コースを選択し,大学での数学は低空飛行」の学生が,高校の数学教諭の免許をとってしまうことになる。
そして,「学力的に受験合格の難しい学生,受験勉強をしないで済ませたい学生」として入ってきた推薦入学者の場合には,この問題は「かなりまずい」レベルにいってしまう。
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