Up 「改革」施策のライフサイクル 作成: 2009-04-18
更新: 2009-04-18


    本日 (2009-04-18),法科大学院統廃合の中教審提言が報道されている。
    (「法科大学院、司法試験合格下位校は統廃合を…中教審提言」(読売新聞))
    この「提言」に続くのは,文科省による各大学院への再編要請である。

    思慮の乏しい「改革」施策は,大きな見込み違いに遭う。
    行政は,この施策に応じたために失敗した各機関に対し,さらに後始末まで放り投げるというわけにはいかない。
    各機関のトップには面子があるし,独自に動くことへの躊躇があるし,そしてなによりも,主体的にふるまう力量をもっていない。
    そこで,施策を打ち出した行政は,これを閉じる形づくりの方も自分の仕事にしなければならない。 実際,「梯子を外す」みたいな格好にしてしまったら,いまの協力関係を続けられなくなる。


    「改革」行政の要諦は,諮問機関の活用にある。

    「改革」施策を打ち出す立場に立たされた行政は,「改革」施策を提言する諮問機関を立ち上げる。 そして,諮問機関が提言する「改革」施策を受けるという形をとって,「改革」施策を関係機関に要請する。

    この場合,単に要請するだけでは,予想外のリアクションを招いて事態を複雑にするおそれがある。 そこで,要請の前には「根回し」をする。 すなわち,要請に対して速やかに手を挙げてくれるところ (「サクラ」) を確保する。 そして,要請を発する。
    後は,「横並び」の力学が働いて,すべての関係機関が要請に応じるようになる。

    「改革」施策は,見込み違いに遭い,撤退が必要になる。
    撤退も,行政と協力機関トップとの協同作業になる。
    順序としては,協力機関の方から「これは保たない・何とかしてくれ」の声が先ず出てくる。 行政はこれに応じる具合に,撤退を策することになる。

    行政は,「行政が撤退を要請する」という形をつくってやる。
    これにより,協力機関は「失敗行政の被害者」になれる。
    施策に応じた各機関のトップ (組織内部の反対を押し切って「改革」施策に応じたトップ) は「お上から撤退の要請がきた (自分のイニシャティブではない)」というふうに組織の構成員に説明でき,面子を保つことができる。

    そしてこの撤退要請もまた,諮問機関を組み込む形で行われる。
    すなわち,「改革」施策からの撤退を提言する諮問機関を立ち上げる。
    そして,諮問機関が提言する「撤退」を受けるという形をとって,「撤退」を関係機関に要請する。

    「改革」施策は,このようなライフサイクになっている。