Up 教授/学習方式としての「プロトコル評価」の位置 作成: 2009-06-24
更新: 2009-12-29


「往還型カリキュラム全面実施」は,「プロトコル評価」を大学教育が全面的に採用すべき教授/学習方式として定めることを,含意する。
さて,「プロトコル評価」とは,そのようなものなのか?

教科教育を専門にしている者は,関連学会で「プロトコル評価」の研究がどのような位置にあるかを見てきている。
自分の分野で「プロトコル評価」が目立ったムーブメントに育たないことを見ている者ならば,「プロトコル評価」が分野依存であるという認識をもつことになる。
そうでない者は,「プロトコル評価」を分野横断の普遍方式と思ってしまうかも知れない。

実際,「プロトコル評価」の議論が盛り上がるのは,分野がコンテンツ・フリーな場合に限られてくる。 「プロトコル評価」は「総合的な学習」導入の議論では盛んになったが,それは「総合的な学習」がコンテンツ・フリーで考えられたからである。

教員養成課程の教科教育の場合,教科によって違いはあるとしても,まさに「コンテンツ」が問題になる。
例えば数学教育の場合,学生の授業設計能力は,4年間通して,レベル分節的に表現されるような成長というものは現さない。特に,主題研究はつねに難関のままである。
「プロトコル評価」は,つぎの前提に立っていることになる:
    成長はプロトコルに表象可能である。そして,「成長とプロトコルの写像関係を逆にたどる形で,プロトコルから成長を読みとる」方式 (rubric と呼ばれる) を,作成することができる。
しかし数学教育は,このようにはならない。

 註 : 数学教員の成長は,職人の成長に似ている。
数学教員養成がレベル分節的に実現できないのは,職人養成がレベル分節的に実現できないのと似ている。