Up 同じ仕事をしているから,同じ給与」の自家撞着 作成: 2011-11-22
更新: 2011-11-22


    丸子警報機事件 (長野地裁上田支部判 1996.3.15) は,正社員と臨時社員の賃金格差が訴えられた事件である。 訴えの論理は,「同じ仕事で正社員と臨時社員の間に賃金格差があるのは不当」である。 「同じ仕事には同じ給与」というわけである。

    同じ仕事には同じ給与」は,一見もっともらしい。 しかし,少し思慮すれば,「本当かな?」になる。

    すなわち,「同じ仕事には同じ給与」では,「給与」の概念が立たなくなるのである。
    実際,給与は,仕事内容に対して支払われるというよりは,役職に対して支払われる。 「給与」の意味から「役職に対して支払われる」を無くしたら,給与は成り立たない。

    正社員と臨時社員の賃金格差は,「給与」のもともとの含意である。
    同じ仕事には同じ給与」が通れば,自分自身を含め天地がひっくり返ることになる。
    この自家撞着が,きちんと理解されねばならない。

    「同じ仕事には同じ給与」は,<給与=複雑系>を意図的あるいは無意識に思考停止している相である。
    「不公平」の論は,だいたいが,この例のように思考停止の相になる。
    思考停止になるのは,「この論には,異論の立つはずがない」からスタートしているからである。 「異論の立つはずがない」からスタートしてしまうのは,「悪は不公平を行い,正義は公平を行う」を世界観にしているからである。

    「不公平」論は,<悪者>論である。
    科学は,<悪者>を立てない。
    <悪者>を立てるのは,イデオロギーである。