Up 要 旨 作成: 2009-07-07
更新: 2009-07-07


    国立大学の大事は,「個の多様性の解発 (release)」の哲学に基づいて考えられているところの「教育・研究の専念」である。
    この意味の「教育・研究の専念」は,経済主義と対立する。
    そこで,これを国立の事業にする。

    しかし,この大事は,目に見えない。
    そして,ひとにとって,<目に見えないもの>は<存在しないもの>とイコールになる。
    実際,国立大学の「法人化」では,大事が二の次にされる。蔑ろにされ,簡単に捨てられる。
    ちなみに,「法人化」の国立大学が導入する競争主義の「業績評価」の本質的意味は,「個の多様性の解発」の哲学の破棄である。

    「個の多様性の解発」は,民間企業の経営者なども口にするかも知れない。 しかし,それとここで謂う「個の多様性の解発」は,根本的に違う。
    民間企業で食い扶持が保証される「個の多様性」は,あくまでも経営者の都合の範囲内のものである。 一方,国立大学が哲学とする「個の多様性」は,はるかに根底的な意味で考えられていて,「だれそれの都合」は相対化されて研究主題になるのみである。

    このことは,「言論の自由」に端的に表れる。
    実際,「個の多様性の解発」の保証は,第一に「言論の自由」の保証である。