Up 国立大学の顧客獲得営業 作成: 2007-05-11
更新: 2007-05-11


    商いの世界では,「競争」は顧客獲得の競争の意味になる。
    国立大学の法人化の要諦は,国立大学にこの意味の競争主義・商業主義を導入すること。


    法人化を進めた行政と財界は,つぎのような発想の仕方をする者であった:
    • 教育・研究は商いと同じ。
      教育・研究のアウトプット向上は販売高向上・シェア拡大と同じ。
    • 競争主義・商業主義の導入で優良劣敗の環境におかれた国立大学は,自助努力するようになり,良い大学に変わる。

    無知な者は,己の傲慢がわからない。
    そして,国立大学が自分たちの言に従うのを見て,ますます図に乗るようになった (『成長力強化のための大学・大学院改革について』(経済諮問会議有識者議員提出資料))。

    実際,国立大学は顧客獲得の「営業」をはじめた。
    受験校を訪問,東京にサテライトを置き学生を募る,遠隔地に入試会場を設ける。


    一見,経済界の目論見通りのように見えるが,ここには構造的不備がある。
    目論見にあるのは,「顧客獲得を見込める商品の開発,商品化,営業」の競争的環境におかれて,より高品位の商品を生産できる大学に変わること。
    しかし国立大学の「顧客獲得」にあるのは営業のみ。


    そもそも,「教育・研究内容が学生を呼び込む」は「商品がひとに買われる」とは全く別物。「教育・研究の向上」は「顧客獲得を見込める商品の開発・商品化」として実現されるものではない。
    実際,国立大学への商業主義の導入は,大学を下品にするばかりで,質の向上へは繋がらない。

    経済界の者は「よい教育・研究が学生を呼び込む」と言いたいだろう。 しかし,大学の「よい教育・研究」はどのように存り,そしてどのような形でひとの知るところになる?
    「全国うまいものマップ」をつくる具合に,財界や国立大学法人評価委員会/文科省が全国優良教育・研究マップ編纂作業をやるというなら,これは大歓迎。しかし,できないことも最初から明らかだ。

       「成長可能性拡大戦略の策定に向けて」(経済財政諮問会議有識者議員提出資料) につぎの文言がある:
    交付金の配分ルールは,例えば以下の観点を取り入れるべきではないか。
    広範な専門家からなる第三者による教育評価の反映(評価体制・基準の確立が急務)‥‥
    有識者 (素人) たちには,「広範な」とか「第三者」とか「評価体制・基準の確立が急務」がことばでしかないことがわからない。言えばそこに在ると思っている。