Up 「伽藍栄えて仏法滅ぶ」 作成: 2006-09-23
更新: 2006-09-23


    もっとも大事なものは,短時間ではどうこうできない。 短時間ですぐにどうこうできないものは,後に回される。 こういうわけで,一見矛盾だが,もっとも大事なものほど後に回される

    企業においては,このことが「本務が雑務の後に回される」という形で現れる。
    そして,これが組織の習い性になると,本務の時間が組織の時間割から消える。 実際,経営者には,本務に充てるべき時間が,雑務のために待機している空白時間のように見えてくる。
    当人たちがそうと意識しないうちに,本分の軽視・破壊が進行している。

    また,雑務は,雑務に追われる者にも,何か仕事をしているように錯覚されてくる。 こうなると,雑務が本務からのエスケープの合理化に使われるという,一種精神倒錯も起こる。


    組織は,このような (危険な) メカニズムを内包している。
    さて,この組織に「組織を立派にする」ことが課題として降って湧いたら,どうなるか?

    「組織を立派にする」が課題として降って湧く場合,その課題は「短期で組織を立派にする」である。
    実際,「100年かけて組織を立派にする」という課題は,降って湧くことはない。

      註 : 課題のもっとも重要な要素は,実は,達成期間である。
      課題には,明示的・非明示的に達成期間がともなっていて,しかもその達成期間は短期である。

    短期で組織を立派にする」課題に対しては,短期でできることやってこれに応えるということになる。 それは,箱ものづくり,システムいじりだ。
    こうして,本務軽視の態で,箱ものづくり,システムいじりに全精力を使う。
    これは,組織に変質をもたらす。本分指向の構え・能力の面での減退が起こる。 ──本末転倒は,必ず組織にこの変質をもたらす。

    これを,「伽藍栄えて仏法滅ぶ」という。


    伽藍栄えて仏法滅ぶ」は,失敗の常形である。
    実際,国立大学法人化の失敗形は,これになる。 ──翻って,本末転倒を抑える行動が,破壊を些かでも軽くするための行動になる。