「法人化」の国立大学は,現在,<生き残り>バブルの最中にある。
ここで,「生き残る」とはそもそもどういうことなのか,一般的に押さえておこう。
- 「生き残る」は,生き残り競争を環境とする。
(註:「生きる」一般は,競争的環境を前提としない。すなわち,「安定的に生きる」という相もあり得る。)
「生き残り競争」の意味は,
- 競争に負ける=生きられない
- 誰かが勝つ=誰かが負ける
- おちおちしてると負ける
- 「生き残り競争」の行動は,「なりふりかまわず」の形をとる。
「なりふりかまわず」において蔑ろにされるものは,<ファンダメンタル>である。
「おちおちしてると負ける」の「おちおちする」の意味は,「<生きる>の<ファンダメンタル>にこだわる」。──<ファンダメンタル>の内容になるものは:
- 本務・義務・正道
- 自然的環境 (生態系)
- 社会的環境 (文化/伝統/遺産,モラル/規範)
「安定的に生きる」の相では共有して鑑賞する博物館の文化遺産が,「生き残り競争でなりふりかまわず」の相では盗みの対象になる。重要な木造建造物が,薪にされる。目先のしのぎのため,本業が捨てられる。
──特に歴史の変動期には,<ファンダメンタル>が収奪・破壊される。
- <ファンダメンタル>の蔑ろの裏返った形として,生き残り競争では価値の極端な単純化が起こる。
(価値の一元化がマネーに進むとき,生き残り競争は「マネーゲーム勝負」になる。)
価値は,生き残る手段に一元化される──マネー,食物,エネルギー資源,等。
併せて,人の優劣の評価基準が一元化される──けんかに強い,マネーゲームに強い,等。
- 生き残り競争とそれに伴う価値の単純化は,法規によって制度化される。──「生き残り競争社会」の出現。
- 生き残り競争社会には,倒錯的・退行的な文化が育つ。
- 単純化された価値で人を評価し,また行動を動機づける。
──金銭主義,能力主義,成果主義,報償主義の文化。
- 成果づくりは単純ゲームなので,制度を悪用する形のショートカット (ズル) が可能になる。そしてこれをすることが,また競争になる。──成果捏造・装飾主義の文化。
- 「あわてること・急ぐこと」自体が価値になる。
そこで,「走りながら考える」,トップの決断,短期成果主義が,褒められるものになる。──スピード主義の文化。
- 生き方が安定していないこと/転業/キャリアシフト/危なっかしさ/リスクテイクが,むしろ讃えられる。──生き残り体験で箔をつける文化。
- <ファンダメンタル>が見えなくなり,<ファンダメンタル>を簡単に破壊する。深い精神性の喪失。──軽薄・退行の文化。
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