Up 「実践」科目の実際 :「総合演習」 作成: 2009-12-14
更新: 2009-12-14


    1998 (平成10) 年に「教職員免許法の一部改正」があり,教育職員免許法上の認定科目につぎの変更がなされた (2000年度入学者から適用):

      教職の意義等に関する科目 教職の意義及び教員の役割  
      教員の職務内容(研修,服務及び身分保障等を含む。)
      進路選択に資する各種の機会の提供等
      教育の基礎理論に関する科目 教育の理念並びに教育に関する歴史及び思想 「教育の本質及び目標に関する科目」
      幼児,児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程(障害のある幼児,児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程を含む。) 「幼児、児童又は生徒の心身の発達及び学習の過程に関する科目」
      教育に関する社会的,制度的又は経営的事項 「教育に係る社会的、制度的又は経営的な事項に関する科目」
      教育課程及び指導法に関する科目 教育課程の意義及び編成の方法  
      教科の指導法 「教科教育法に関する科目」
      道徳の指導法 「道徳教育に関する科目」
      特別活動の指導法 「特別活動に関する科目」
      教育の方法及び技術(情報機器及び教材の活用を含む。) 「教育の方法及び技術(情報機器及び教材の活用を含む。)に関する科目」
      生徒指導,教育相談及び進路指導等に関する科目 生徒指導の理論及び方法 「生徒指導,教育相談及び進路指導に関する科目」
      進路指導の理論及び方法
      教育相談(カウンセリングに関する基礎的な知識を含む。)の理論及び方法  
      総合演習 総合演習  


    各教員養成系大学・学部は,この中の「総合演習」に応ずる科目を設ける。
    これが,ここでとりあげる「総合演習」の沿革である。

    「総合演習」は,どうしてでてきたのか?
    同時期に,「ゆとり教育」がある。 これの象徴的科目が「総合的な学習の時間」である。
    この「総合的な学習の時間」への教員養成系大学・学部側対応として,「総合演習」が考え出された。 すなわち,「総合的な学習の時間」を扱える教員を養成するという発想である。

    • 教育職員免許法施行規則,第6条,備考7
      総合演習は、人類に共通する課題又は我が国社会全体にかかわる課題のうち一以上のものに関する分析及び検討並びにその課題について幼児、児童又は生徒を指導するための方法及び技術を含むものとする。

    • 教育職員養成審議会, 2000/03/21議事録
      ○ 「総合的な学習の時間」に関する指導法を教員に修得させる場は設けないのか。
      △ 「総合的な学習の時間」は、課題解決型の学習を行うことのみならず、各学校の創意工夫によって授業の指導等を行っていくことに特徴があると思われる。また、前者についても、「総合的な学習の時間」のために設けられた科目というわけではないが、平成10年の教育職員免許法改正によって設けられた「総合演習」を履修することにより、総合的な学習の時間の指導にも資するものと考えている。
      ○ 「総合的な学習の時間」については、どのテーマを扱ってもいいために、その指導についての構造的なまとまり、実践理論、方法論などが確立していない。
      △ 現在、国立教員養成系大学においては、現場でカバーしきれない課題を研究する方向で努力しているところである。
      ○ 「総合的な学習の時間」において何を取り扱うか、といった講座等は多く見られるようになったが、その指導によって何を目指すのかという目的意識の部分が抜けている可能性はある。○特に理数系の教科においては、各教科ごとに指導法がマニュアル化されているような状態があり、総合的に指導した場合に教員の困惑が多いように思われる。
      ○ 各教科を専門的に学修し、課題追求の方法論を身につけた者こそが、様々な課題についても総合的に課題追求していけるのではないか。
      ○ 確かに、総合的な部分のみを取り出して構造的な指導法等を探ることにも限界はあるだろう。


    「総合演習」は,この間ずっと,<だれでも担当>仕様の授業として扱われてきた。
    「ゆとり教育」路線は,いまは過去のものである。 しかし,「総合演習」は残る。
    当番制でしぶしぶ引き受け,時間を埋める何かを適当にさがして授業の格好にする科目として,続くのである。