Up 統計学専任教員をおくことの費用対効果比 作成: 2009-12-01
更新: 2009-12-01


    国立の教員養成系大学・学部の数学教育コースの場合,統計学の専任教員がおかれていることはまれである。
    なぜか?

    先ず,科目のプライオリティを考えたとき,統計学は上位にはあがりにくいということがある。
    大学・学部全体で「専任を一人採用できるが,何が専門の教員を採用するか?」の話が持ち上がるとき,「それは統計学だ!」とはなりにくい。
    実際,教員免許法の定める「教科に関する科目」の中には「確率論,統計学」があるが,統計学の科目は,代数学・解析学・幾何学科目とのバランスから,年間せいぜい2つ (4単位) 開かれるくらいのものである。

    また,専任教員の新規採用は,大学にとって高い買い物である。 この高い買い物に,「統計学」が見合うかという問題になる。
    実際,年間1千万円以上の人件費を考えたら,非常勤講師での科目のやりくりの方に自ずと想いが行く。
    非常勤講師であれば,時間給 5,500円として1回の授業 (90分) に 11,000 円支払うとしても,半期 (15回) 16万5千円。 専任1人の人件費を少なめに年間1200万円としても,1200 ÷ 16.5=72.7 というわけで,非常勤講師 72人を賄える計算になる。
    よって,「なぜ統計学か」の説明によほど合理性が認められるのでなければ,ここでも「統計学を採用!」とはならない。

    統計学が不利なのは,教員養成系大学・学部に限ったことではない。 他の学部においても──理学部でさえ──統計学の専任教員がおかれているところは,割合として少ない。

    学科の統計専門教員の所属状況
    専門者所属学科数 学科数 所属割合
    文学・語学・文化・芸術・教育関係 48 310 15%
    理・工系 149 696 21%

    『報告:数理科学分野における統計科学教育・研究の今日的役割とその推進の必要性』,
     (日本学術会議 数理科学委員会数理統計学分科会, 2008) より