Up 「モラル」の意味を理解する 作成: 2006-05-07
更新: 2006-05-07


    モラルは,「善悪・正誤」とは関係ない。 所与 (場合) における「適切・妥当」のことであり,プラグマティックに定まる。

    モラルのプラグマティックな性格を示すために,これを操作的に定義したのがカントだ。 ──カントは,"Categorical Imperative" と称するゲームを導入する。このゲームは "universalizability test" の趣で,ある行為が道徳的か否かを決める。すなわち,行為 X は,みんなが同じく行っても依然意味を保つとき,それは道徳的,そうでないときは非道徳的となる。

      例えば,一人の学生が,学習グループ変更の内定を個人的にもらおうとして,一人の教員にコンタクトしてきた。その教員は「温情」の気持から,その学生のために根回しを行った。さて,この学生と教員の行為は,道徳的か非道徳的か?
      これを,"universalizability test" にかけてみる。すると,この行為はたちまちにパンクする。みながこれを行うと,この行為は成立しなくなる。よって,この行為は非道徳的である。

    別にカントを持ち出さなくとも,この観念操作は,普通だれでもやっている。わがままをする者に対し「みながこれをやったらどうなるか考えてごらん」と指導するわけだ。──これに対し,アタマでっかちな人間は,使う場所でないところで「学生の不利益」だとか「学習権」だとかを言い出す。

    ただし,モラルは不合理なシステムを温存するものにもなる。(モラルは,「善悪・正誤」とは関係ない!) したがって,モラルの主張には,必ずシステムの合理性の押さえが伴っていなければならない。

    「システムの不合理はモラルを後退させる理由になる」と考える者がいる。 しかしそれは,システムの不合理にさらにモラルの破壊を加える行為。
    システムの不合理が忽せにできない場合には,システム自体の修正で対応しなければならない。

      穏便主義の組織では,「システムには触らず,モラルを後退させる」をやってしまう! ──こんな調子で,組織のグチャグチャ化が進行する。