Up お手盛りポスト 作成: 2006-03-05
更新: 2006-03-08


    北海道教育大学で「理事補佐」ポストが新設されたそうだ。
    その役職の業務内容や報酬の詳細,ポスト新設が稟議で決まったのか会議で決まったのか,稟議なら稟議書の内容,会議なら議論の内容,影響してくる経費配分,等々,いっさい伝えられていない。

    このポスト新設は,大学執行部に関わる重要な構造的問題を内包している。
    しかし,スタッフ一般において,構造的にこの問題がとらえられているかどうか,不明である。 そして,おそらく,執行部自身にも,この問題の構造的重要性は認識されていない


    「国立大学法人化」「学長の強力なリーダシップ」で,大学執行部は大学運営を大幅に自由にできるようになった。
    この自由は未経験のものであるので,適切にこれを享受するにはかなりの能力を要する。 「抑制」の理性を厳しく働かさないと,容易に集団心理で羽目を外してしまう。

    成り上がりで権力という座に初めてついた者が容易にはまる陥穽が,「集団心理で羽目を外す」, すなわち「幹部腐敗」。
    「幹部腐敗」の中心は,公金横領。そしてこの横領の最もシンプルでかつ犯罪性の隠蔽が容易なのが,「お手盛りポスト」だ。
    公金を直接手渡せば公金横領だが,ポストに就かせて報酬を払えば犯罪性がなくなる。

    このような「ポスト」を隠れ蓑にした公金横領は,ありふれている。通時的 (歴史的)・共時的 (地理的),どこにでも見つかる。
    政治的スタンスも関係ない──サヨクもリベラルも関係なし。要するに人のお里が現れるということだ。

      ちなみに,企業が役人に直接金を渡せば賄賂だが,「天下り」ポストに就かせて報酬を払えば,犯罪性がなくなる。「天下り」とは賄賂後取りの賄賂年金といったものだが,この時代,臆面無くよくも堂々と続けていられるものだと,あきれたを通り越してむしろ感動すらおぼえる。


    「お手盛りポスト」は「政治汚職」の常套,「幹部腐敗」の典型。
    したがって,大学スタッフは,執行部の行う「ポスト」運営をしっかり監視する目をもたねばならない。また,大学執行部は,スタッフからの監視の目をしっかり意識した「ポスト」運営をしなければならない。

    この見識をもってこの度の「理事補佐」ポスト新設を見れば,やり方が一方的で,めちゃくちゃなのだ。手法はまさに「お手盛りポスト」。

    強調するが,ポスト運用,特にポスト新設は,厳格の極みで行わねばならない。無償雑務 (「給料のうち」とされる雑務) の問題と絡むということもあるが,何よりも重要な点は,これが「汚職・腐敗」の問題を自ずと孕む問題だということ。

    大学執行部が「お手盛りポスト」をやっているとここで言うつもりはない。(「お手盛りポスト」かどうかは全学スタッフの判断するところ。) ここでさしあたり言おうとするのは,大学執行部は「お手盛りポスト」の問題に無神経であってはならないということだ。

    今回の執行部の手法を既成事実化することは,将来に必ず大きな禍根を残すことになる。 これは,看過してより問題ではない。わたしとしては,先ずは執行部の方から「理事補佐」ポストの問題をリセットすることがのぞましいと考える。

    それにしても,「(その真意にかかわらず) やり方は犯罪的である」という認識が大学執行部に欠けている現実は,かなり危機的である。──「学長の強力なリーダシップ」が「腐敗」とつねに背中合わせであることを,進言できる立場の者は彼らに知らせてやる必要がある。