Up (6) 大学院の充実の必要性  


大学院、特に修士課程については、より高度な専門性を有する教員を養成するとともに、現職教員の受入れを推進していくため、質、量ともに充実していくことが求められている。

修士課程の充実
学校現場で生じている課題はますます多様化、複雑化し、専修免許状を持った資質の高い教員の拡充が求められており、修士課程においては、このような要請に応えていく必要がある。

学部段階では、教員として通常必要とされる資質能力を育成することを基本としており、それに加えて高い専門性や特定分野に強い教員を養成していくためには、修士課程で対応していく必要がある。専門的な知識を備え、学校現場が抱える問題に積極的に取り組む中核的教員の養成はますます重要となっており、今後とも修士課程を一層充実していくことが必要である。


現職教員の積極的な受入れ
現職教員については、体系的で効果ある研修を目指して、その年齢や経験の各段階に応じて、例えば、学校現場における研修、地方公共団体の教育センター等における研修、大学の修士課程における研修など様々な形での研修が行われている。
教育職員養成審議会第3次答申「養成と採用・研修との連携の円滑化について」(平成11年12月)においても、現職教員としての資質の向上を図るため、研修の見直しや充実の必要性が指摘されているが、その中で特に大学に対しては、教員研修プログラムの研究開発や実施体制の整備の必要性が指摘されている。

現職教員に対する研修の面からみると、教員養成学部の修士課程においては、主として教員の資質向上を図るため専修免許状の取得を目的としているが、学校現場で様々な問題意識を持った現職教員を積極的に受け入れていくことは、教員としての資質の向上に資するだけでなく、修士課程そのものの活性化にもつながっていくものである。

同答申にも指摘されているように、今後の研修に当たっては個々の教員の自発的・主体的な研修意欲に基づいた研修を奨励し、そのための支援体制を整備していくことが必要である。

教員養成学部の修士課程の現状をみても、以前は地方公共団体の派遣によるものが主であったが、近年は職務に従事しつつ大学院に入学してくる現職教員が増えてきている。できるだけ多くの現職教員が大学院教育を受けることができるよう、各大学においては、履修形態の弾力化等実施体制の一層の充実を図っていくことが必要とされている。


新教育大学
いわゆる新教育大学3大学は、現職教員に対して、大学院(修士課程)における高度の学習・研究の機会を提供し、理論的、実践的な能力の向上を図っていくことを目的として設置され、主として地方公共団体からの派遣制度に基づく教員を大学院に受け入れ、現職教員の再教育の推進に大きな役割を果たしてきている。

これらの大学が、2年間の派遣制度により、体系的で充実した教育指導を行い、十分な力量をつけた上で、学校現場に復帰させていくことの意義の重要性は変わるものではない。

他方、当該大学が設置された当時は、他の教員養成大学の修士課程の数は限られていたが、その後、逐次整備が進められ、現在ではすべての大学に修士課程が設置されている。
各大学においても、大学院設置基準第14条に基づく教育方法の特例を利用し、1年目はフルタイムで通い、2年目は学校現場に復帰し、職務に従事しつつ指導を受けるという形態を中心に、現職教員の受入れが積極的に進められているところである。

このように、それぞれの大学に修士課程が置かれたため、教員側も学校現場を離れずに大学院教育を受けたいという志向が増えてきていることも影響し、新教育大学における現職教員の受入れ数は減少傾向にある。

このため、新教育大学については、現職教員の再教育の中心的機関としての基本的性格に留意しつつも、上述のような状況の変化を踏まえて、今後の在り方を検討していくことが必要となっている。


連合大学院博士課程
それまで教員養成学部の教員の多くを他学部出身者に頼っていたが、教員養成学部においてこれを養成することによって、教員養成学部の独自性や専門性を高めていくことを目指し、平成8年度に東京学芸大学及び兵庫教育大学に連合大学院方式で博士課程が設置され、関係者において目的の実現のため様々な努力が重ねられている。この博士課程は、まだ設置されて間もないこともあり、必ずしも評価は定まっていないが、設置の目的を実現していくため、よりその趣旨に沿った教育研究を推進していくことが求められる。
また、今までの3回の修了者の就職状況をみると必ずしも順調とはいえないが、設置目的に沿った教育研究の推進と相まって、改善が図られていくことが望まれる。