Up (2) 教員養成カリキュラムの在り方  


1 体系的な教員養成カリキュラムの編成の必要性
教員養成学部は、全教科を担任する小学校教員と10教科にわたる中学校教員を養成していることから、それに必要な各教科の専門科目、教科教育法(学)及び教職の専門科目が開講されており、他学部に比べ幅広い専門分野で構成されている。

他方、教員養成の在り方として、教員養成学部内においても従来からいわゆる「アカデミシャンズ(学問が十分にできることが優れた教員の第一条件と考える人達)」と「エデュケーショニスト(教員としての特別な知識・技能を備えることこそが優れた教員の第一条件と考える人達)」との対立があり、それぞれの教科専門の教育指導の基本方針が、分野によりあるいは教員により違うという傾向がある。
特に、小学校教員養成において、わずか数単位である小学校の教科専門科目にどのような内容を盛り込むべきかという教員養成学部独特の課題についても、共通認識が薄かった面がある。そのことが、教員養成カリキュラムの共通の目的性に欠け、ややもすると学生に対する教育が教員個々人の裁量に委ねられているのではないかとの批判につながっている。

将来教員になるべき学生に、幅広くいろいろな専門分野を体系的に教育するとともに、教員としての実践的な能力を育成していくためには、教員養成学部の教員が、教員養成という目的意識を共有し、体系的なカリキュラムを編成していくことが不可欠である。そのため、学内に教員養成のカリキュラムの在り方を検討するための組織を作っていくことも有効と考えられる。

2 モデル的な教員養成カリキュラムの作成
前述のように、教員養成における体系的なカリキュラムは、教員養成に携わる教員の間において必ずしも確立しているとはいえない状況にある。教員養成に関する共通的な認識を醸成し、教員の質を高めていくためには関係者においてモデル的な教員養成カリキュラムを作成することが効果的と思われる。

現在、医学部や歯学部におけるモデル・コア・カリキュラムの作成や、工学部等における技術者教育プログラムの認定制度の導入など、それぞれの分野において教育の質の向上に向けて様々な試みがなされている。教員養成学部についても、日本教育大学協会を中心として速やかに教員養成のモデル的なカリキュラムを作成し、各大学はそれらを参考にしながら、自らの学部における特色ある教員養成カリキュラムを作成していくことが求められる。

3 各大学における教員養成カリキュラムの創意工夫
各教員養成学部は、モデル的な教員養成カリキュラムを参考にしつつ、学部自らの判断に基づいた教員養成カリキュラムを編成していくことが求められるが、その際、特に次のような項目について、教員によって区々にならないよう一定の指標を共有することが望ましい。
・   授業の内容(目的・目標、範囲、レベル)及び方法
・   学生が修得すべき知識・技術の内容
・   成績評価の基準と方法

また、各大学が教員養成カリキュラムを作成する際、特に留意しなければならないことは、教員養成は単なる教育方法のテクニックの修得を目的とするものではなく、子どもの成長と発達に対する深い理解と教科に関する専門知識に基づいて行うものでなければならないということである。

なお、幅広い人間性の涵養や社会的視野を広げるため、他大学との単位互換や、他学部の授業科目の履修、各種の社会体験の奨励なども積極的に検討すべきである。

教員養成カリキュラムの在り方については、今日まで日本教育大学協会や国立大学協会、日本教育学会をはじめ、様々な団体、個人から提案がなされ、一定の成果があがっている面もないわけではない。我が国の教員養成の質的向上のため、今後とも関係団体や関係者において様々な研究ができるだけ速やかに進められるべきである。そして何よりも必要なのは、各大学において力量ある教員を養成するための教員養成カリキュラムの編成について創意工夫がなされ、それが実践されることである。また、国はそのための支援措置を積極的に講じていく必要がある。

各大学においては、それぞれの判断に基づいた教員養成を行っていくため、それぞれが養成を目指す教員像を明確にし、それに基づき、次に示す教科専門、教科教育法(学)、教職専門の各科目を体系的に組み合わせるとともに、幅広い人間性や主体的な判断力など、これからの教員に求められる資質能力を育成するために、他大学や他学部とも協力して、幅広い選択科目を用意するなど、それぞれの独自性を発揮した魅力ある教員養成カリキュラムを編成すべきである。