Up (4) 成績評価の厳格化  


1 単位制の趣旨
大学設置基準においては、講義、演習、実験等授業の形態にかかわらず、各授業科目の単位数は教室等における授業時間と学生の事前・事後の教室外の学修時間をあわせ45時間の学修を必要とする内容を1単位として構成することを標準とし、例えば講義及び演習における教室内の授業時間は15〜30時間とするものとされている。この趣旨及び年間の授業期間が定期試験等の期間含めて35週にわたることを原則としていることを考えれば、あまりに多くの単位を修得することは極めて困難なことといえる。

我が国の大学は単位制度を用いているが、その形骸化が大学教育の質の低下を招くとの認識のもとに、平成11年に大学設置基準が改正され、大学は1年間又は1学期間の登録科目単位数の上限を設定するよう努めることとされた。

2 複数免許状の取得及び修得単位数の現状と成績評価の厳格化
教員養成学部の学生は、主として就職上の必要性から複数の教員免許状を取得する傾向が強かった。平成12年3月卒業者のデータでみると、卒業生の82.1%が複数の免許を取得している。それに伴い、修得単位数も増加し、161単位以上修得している学生が42.8%にも及んでおり、単位制度の形骸化が指摘されていた。その背景としては、免許取得上必要という理由の下に授業科目の履修を学生の任意に委ねていたことが考えられる。

前述の登録単位数の上限の設定により、修得単位数の改善が図られつつあると考えられるが、この趣旨を徹底するとともに、単位制度の実質化を図るため、シラバスの作成、事前・事後の学習の明確な指示の義務付けなど、責任ある授業運営や成績評価の厳格化を図ることが求められている。
ここで求められるのは、大学としての自己規律であり、複数免許の取得が就職のために必要であるということで黙認するのではなく、教授すべき内容を精選するとともに、その内容の修得を徹底させていくことが結果的に大学教育の質の向上、ひいては教員となるべき学生の質の向上につながると考えられる。

学生が多くの単位を修得している理由の一つに、採用側が複数の免許状を取得していることを原則にしたり、あるいは優先的に扱うために、そうせざるを得ないという事情がある。教員の専門性を重視する観点から、大学側における免許取得上の指導が求められるが、採用側においても、これらのことに関して特段の配慮が望まれる。
なお、現在、中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会において、例えば中学校教員免許状取得者が小学校の高学年の授業を担当できるようにすることも視野に入れた、教員免許の弾力化について検討されているが、これらの審議状況にも留意していく必要がある。