Up (5) 教員養成学部の教員の在り方  


教員養成学部が優秀な教員を養成するにしても、独自性や特色を発揮するにしても、それを支えるのは大学の教員である。教員養成学部にふさわしい教員を確保し、育成していかなければ、その実現は望めない。
以下、教員養成学部の教員の3つの担当区分に即して、その在り方を述べることとする。

1 教科専門科目担当教員の在り方
現在、大学によって多少の差があるが、教員の6〜7割を教科専門科目担当教員が占めており、その多くが理学部や文学部等教員養成学部以外の学部の出身である。これらの教員が、どのような意識で教員養成に取り組むかが教員養成学部の方向付けに大きく影響する。

教科専門科目の在り方は、前述のとおりであり、それを担当する教員は、その趣旨に沿った教育研究に取り組むことが求められる。教科専門科目担当教員は、他の学部と同じような専門性を志向するのではなく、学校現場で教科を教えるための実力を身に付けさせるためにはどうすべきかという、教員養成独自の目的に沿って教科専門の立場から取り組むことが求められる。それは、教員養成学部固有の教育研究分野である。今後、教科専門科目担当教員には、そのような教員養成学部独自の専門分野の確立に向けて努力することが求められる。

2 教科教育法(学)担当教員の在り方
この分野は、前述のとおり教員養成にとって重要な分野であり、沿革の項でも触れたように、特に教員養成学部においては、各教科ごとに専門家を配置するなど、従来から充実に努めてきた分野である。今後、小学校教員養成における教科専門と教科教育の分野の結びつきなど教員養成学部が独自性を発揮していくため、学内で牽引的な役割を果たしていくことが求められる。

3 教職専門科目担当教員の在り方
教職専門科目は、前述のとおり、教員養成の根幹をなす分野であり、学生にとって、子どもに対する理解や教員にふさわしい人間性を深めるための基礎となるべきものである。そのため、教員養成という立場から学校現場をフィールドとしつつ、子どもたちに目を向けた実践的な教育研究が推進されることが求められる。

教員養成学部の教職専門科目を担当する教員のうち、非教員養成系の教育学部出身者が占める割合は50.2%(平成12年5月1日現在)にのぼっている。教員養成における教職専門科目の重要性にかんがみ、これらの学部においては、教員養成学部のこのような実態にも配慮した教育研究の展開が望まれる。

4 教員養成学部にふさわしい教員の確保
以上の3つの区分の担当教員が共同しつつ、体系的なカリキュラムの展開に向けて独自の専門領域を創っていくためには、教員の意識改革だけでなく、教員養成学部にふさわしい教員をどのように確保していくかが重要な課題である。

教員養成学部の教員の出身学部・大学院をみると、教員養成系が19.6%、非教員養成系の教育学部が15.3%、一般学部等が65.1%となっており、特に教科専門の担当教員は、一般学部等の出身者が82.9%を占めている(平成12年5月1日現在)。

平成8年度に教員養成学部の博士課程が設置されたため、今後教員養成系大学院の出身者が増えていくことが期待されるが、当面は前述の傾向が大きく変わる ことはないと考えられる。また、いろいろな学部・大学院の出身者が教員となることは、教員養成学部の活性化の面から好ましいことともいえる。

ただ、一般学部の目的と教員養成学部の目的とは異なるものであり、その出身者は教員養成学部の教員になるまでは教員養成の在り方という観点からの教育は受けていないのが通常である。それらの者が教員養成学部の教員になった場合は、「教員養成はいかにあるべきか」あるいは「学校における授業はいかにあるべきか」という観点から教育研究に当たることとなる。

したがって、教員養成学部に採用されてから学部の目的と教員個々人の志向に齟齬が生じないよう、教員募集時に、必要とされる資質能力や役割を明確にしておくとともに、採用後にも教員養成学部の教員として取り組むべき教育研究の内容等について絶えざる自己研鑽を求め、教員養成学部にふさわしい教員を確保していくことが必要である。

教員養成学部は、学校の現場と密接に結びついた実践的な学部であることから、教員を採用する際、教員免許状の取得や学校現場における何らかの教育経験を有することを条件とすることも考えられる。また、必要に応じ採用後も附属学校の授業の担当等を通じて、学校現場との接触を保持していくような取組も推進していくべきである。

また、教員養成学部としてふさわしい教員を確保するとともに、教員養成学部独自の専門性を高めるシステム作りという観点から、例えば教員養成カリキュラムの確立という観点に立ったシラバスの作成、定期的なファカルティ・ディベロップメントの実施等、具体的な取組を行っていくことが必要である。

これに関連し、教育委員会等との連携により、特に学校現場を熟知した者が教授するにふさわしい科目については、教員養成の充実の観点から、現職教員や指導主事を非常勤講師等として積極的に活用していくことも求められる。

また、特に教科専門科目の担当教員について、各大学における教員審査の改革を促す意味で、大学設置・学校法人審議会における教員資格審査の在り方についても検討されることが望まれる。

5 教員組織の弾力的編成
今後は、学校現場のニーズにあわせ、教員組織を弾力的に編成していくことが求められる。例えば、平成10年に免許法が改正され、教科に関する科目の要修得単位数が減少し、教職に関する科目の要修得単位数が増えたり、「教科又は教職に関する科目」という選択履修の区分が新たに設けられたが、大学の判断によってこれらに対応した教員組織の弾力的な編成が求められる。

また、教員養成学部の教員組織については専門分野の構成が各大学とも総じて等質的となっており、そのことがカリキュラムや教員組織に現状維持の方向で作用している面がある。
平成3年の大学設置基準の大綱化に伴い、教員養成学部に置かれる大学院の専攻に要する分野を具体的に定めた上記審議会の審査内規が廃止されたにもかかわらず、依然としてそれを基準にそれぞれの分野に専任教員が配置されなければならないととらえられ、そのことが学校現場のニーズを踏まえた新たな分野に対応   していくことの妨げとなっているとの指摘もある。
今後は、学校現場における新たな教育課題への対応等を通じ、各大学が特色を発揮していくため、弾力的な教員組織の編成に努めることが望まれる。