Up (1) 再編・統合の基本的な考え方  


1 検討の前提
現在、大学(国立大学)の構造改革の観点から、大学間の再編・統合や大学自体の改革の検討が進められている。教員養成学部の組織・体制の具体的な在り方は、これらの動向と密接に関係していくものと考えられるが、本懇談会としては、教員養成の在り方という観点から検討を行った。

2 教員養成課程全体の入学定員及び今後の教員需要への対応
教員養成課程全体の入学定員については、少子化に伴う教員就職率の低下を踏まえ、平成10年度から12年度までの3年間に約5千人の削減を行い、現在約1万人の規模となっている。

今後、公立学校の教員の定年退職者の増加や都道府県における教員配置基準の改善に伴い、教員採用数の増加が見込まれるため、それに対応して、むしろ教員養成規模を拡大すべきではないか、特に教員養成学部の小学校教員養成に果たしている役割を考えると、小学校教員が不足するのではないかとの意見がある。

これに対しては、
・ 教員採用試験受験者数と教員採用数に大幅なギャップがあり、就職できない教員希望者が多数存在すること
・ 公務員の再任用制度が導入されたこと
・ 採用の側も各学校における教員の年齢構成のバランスを確保するという観点から、幅広い年齢層から採用するような措置をとってきていることなどから、退職者の増がそのまま新規卒業者の採用数の増につながっていくとは考えられない状況がある。
また、退職者数は一時期増加した後、また減少に転じていくことが見込まれることなどから、教員養成学部の養成規模を今後の定年退職者の増加見込み数に応じて増加しなければ、教員の確保に支障が生じるようなことにはならないと考えられる。

このようなことから、今回の再編・統合の検討に当たっては、現在の1万人体制をもとに、優秀な教員を養成していくための教員養成学部の組織・体制の在り方を検討していくことが適当である。

これからの教員養成における国の役割を考えた場合、義務教育諸学校、特に小学校教員を一定数、計画的に養成していくことは、今後とも重要なことであるが、それとともに、様々な課題を抱える学校現場においてリーダーとなって活躍していく力量ある教員を養成していくシステムづくりが、強く求められている。

3 再編・統合の基本的な考え方
活力ある大学・学部を実現し、新たな教育課題に積極的に対応するとともに特色ある教育研究を推進していくため、1学部当たりの学生数や教員組織がふさわしい規模となるように再編・統合を行うことが必要である。
その際、当該地域の教員需給の見通しや学生の流動状況等も勘案しつつ、近隣の複数の都道府県を単位として教員養成学部の再編・統合を行うことが適当である。

再編・統合に当たっては、国立の教員養成学部の役割、とりわけ小学校教員の養成に果たす役割を勘案しつつ、特定の地域の偏在を避け、全国的にバランスのとれた養成体制になるよう考慮する必要がある。

再編・統合の際、総合大学の学部として再編・統合する方法と単科の教育大学として再編・統合する方法が考えられる。
総合大学の場合には、
・ 多様な学部の学生と一緒に学んだり交流を持つことを通じて、より幅広いものの見方・考え方に触れることができること
・ 教育や教職の在り方を客観的な目でとらえる機会がより多く持てること
・ 他学部との連携により幅のある教育研究の展開が期待できること
などの利点があると考えられる。
他方、単科大学の場合には、
・ 学生が教職という共通の目的意識をもって学べること
・ 教育理念や目指す教員像に向かって大学全体での取組がしやすいこと
などの利点があると考えられる。

教員養成という観点からみれば、いずれかに特定するのは適当でなく、いずれの場合もあり得ると考えられる。実際上は、現在進められている国立大学の構造改革の一環としての再編・統合とも密接に関係してくるものであり、各大学の将来構想等も踏まえつつ、個別具体的に検討を行う必要がある。

新課程については、教員養成学部の再編・統合を契機に、原則として教員養成学部から分離していくことが適当である。その際、当該再編・統合に係る関係大学・学部間で、教員養成課程と新課程の分野の適切な役割分担を図るほか、既存の組織の充実に充てるなど、それぞれの大学の個性・特色の発揮につなげていくようにしていくことが適当である。

教員養成学部の再編・統合によって、教員養成学部がなくなる都道府県については、当該都道府県等の教育委員会との連携協力の体制や現職教員の大学院での再教育の体制の整備に十分留意する必要がある。その実現に向け、大学と教育委員会との連絡調整等、国としても必要な支援を行っていくことが望まれる。

なお、今回の再編・統合による新たな教員養成の組織・体制については、一定期間の後、その成果について評価を行うとともに、必要な場合には見直しを行い、更なる改善に努めていくべきである。
その際、教員養成学部が設置されている都道府県だけでなく、幅広く他の都道府県の教育委員会等の関係者から意見を聞くことにも配慮すべきである。