Up 科研費を,収入の方法として使う 作成: 2010-06-26
更新: 2010-07-02


    行政は,「国立大学の法人化」の施策として,国立大学に対し交付金を削減する。 一方,国立大学が《利潤追及型事業を新たに起こし,これに成功し,資金をやりくりできるようになる》ものでないことも,わかっている。 すなわち,国が国立大学を資金で支えるものであることを,わかっている。

    ただし,国立大学に取らせる資金は「競争的資金」でなければならない。 そして,競争的資金は,目的資金である。

    競争的資金の獲得は,《獲得資金を目的から逸脱する形で使える》のでなければ,大学の収入にならない。 大学の収入にならないのであれば,大学の資金を支えるものにはならない。 また,大学の収入にならないのであれば,大学も競争的資金の獲得に熱心にはならない。
    よって,《獲得資金を目的から逸脱する形で使える》しくみを設けねばならない。


    国立大学の「法人化」では,科研費も「大学に対する競争的資金」の意味をもたされることになった。
    「間接経費」が,このときの《獲得資金を目的から逸脱する形で使える》を実現する手法である。 すなわち,「獲得資金の一定比率を,大学の真水の収入にしてよい」というルールがつくられる。 (比率は 30%が一般的)
    もちろんルールでは「関接経費」の「関接」を強調するが,「関接」と唱えれば何でも「関接」になる。 そして実際,何でも「関接」になるように,このしくみをつくったわけである。

    こうして,「法人化」の国立大学は,全ての教員に科研費申請を義務づけるようになる。
    科研費申請を直接促すこととあわせて,「業績評価」のポイントにするというやり方で間接的にこれを促す。

    このとき,目をつぶって見ないことにした道理/ 倫理は,つぎのものである:
    科研費は,特定のタイプの研究のために用意されている。 すなわち,まとまった額が必要な研究が対象である。 そして,全ての教員がこのタイプの研究をしているわけではない。
    翻って,全ての教員が科研費を申請するとは,科研費申請のために科研費申請をするということである。
    科研費は税金であるから,このような科研費の使い方は「税金の無駄遣い」である。

    行政が,「間接経費」のルールを段取りする。
    行政が,「無駄遣い」を段取りする。
    「無駄遣い」は,行政と大学の協働 (共犯) になっている。