読売新聞, 2024-07-17
これの背景になっているのが:
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日本経済新聞, 2022-03-31
中国、ソロモン諸島と安保協定
中国外務省は31日、南太平洋の島国ソロモン諸島と2国間の安全保障協定に基本合意したと発表した。汪文斌副報道局長は同日の記者会見で「地域の平和と安定に役に立つ」と意義を強調した。ソロモンに近いオーストラリアなどは中国の軍事拠点の構築につながると警戒している。
具体的な内容は公表されていない。インターネット上に流出した協定の草案とされる文書によると、ソロモン側が社会秩序の維持などのために、中国に軍や警察の「派遣を要請できる」と明記した。「ソロモン諸島で中国の人員の安全や主要な事業を守るため、中国の部隊が利用できる」とも記した。
ソロモン側は声明で「全てのパートナーと協力し、全ての人々が平和に共存する安全な国家を提供する」と強調した。
ソロモンは2019年に台湾と断交して中国と国交を樹立した。21年には親中派のソガバレ現政権に反発する住民らが反政府デモを行ったのをきっかけに、暴動が起きた。汪氏は中国から警察顧問や警備に必要な物資を送り「大きな成果をあげた」と主張。今回の安保協定の意義を強調した。
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ソロモン諸島国は,LDC (Last Developed Country 後発開発途上国) と位置づけられる国である。
アフリカの LDC と同じく,政情が不安定である。
日本人の「太平洋諸島国」のイメージは「豊かな自然の中でのんびり・ゆったり」だが,こういう地域はだいたいがエスニック・テンションを孕んでいる。
即ち,棲んでいる島の違いがそのままエスニックの違いになり,不満のはけ口が他の島民に向けられることで,暴動が勃発しやすい。
ソロモン諸島では,1998年末に「ソロモン内戦」が勃発している。
それは,オーストラリア国防軍を中心とするRAMSI によって暴動鎮圧・秩序維持となった。
しかし,その暴動鎮圧・秩序維持はエスニック・テンションに蓋を被せただけで,エスニック・テンションが燻る構造は変わっていない。
このソロモン諸島国の「中国と安全保障協定を結ぶ」の意味は,「政情不安の動乱が起こったときの治安出動は,中国がこれに当たる」である。
治安出動は,これまではオーストラリアが担ってきた。
これを,中国に切り替えるというわけである。
LDC とは,他国からの援助で成り立っている国である。
独立国ではあるが,他国からの援助で生きている国である。
この国にとって「よい国」は,たくさん援助してくれる国である。
LDC は,覇権主義に自国の活路を求めている国の餌食になりやすい。
援助国は,援助プロジェクの条件として秩序維持を求める,
それは LDC に無理を求めることになるので,「援助」の中身に「援助国が秩序維持も担当」が含められる
こうして,「援助」は「安全保障協定」と込みになる。
そして,「援助国が秩序維持も担当」は,援助国を宗主として頂くということである。
ソロモン諸島と中国の関係は,このような関係へと発展しているところである。
ソロモン諸島にとって,中国は「よい国」である。
また,ソロモン諸島にはもともと台湾系および中国系住民がいて,ソロモン内戦では国外退避となった経緯があるので,この点でも「安全保障協定」は自然なことになる。
日豪米はこの流れをおもしろくなく思っている。
しかしこれは,ソロモン諸島への「援助」競争を中国とやり合うみたいな事柄ではない。
金で相手との関係を繋ぐというのは,中国にとってもそれはそれでなかなか大変なことなのである。
中国には先ず,ソロモン諸島の政情不安を利用するのがいいか,それとも無くしていくのがいいか,の選択肢がある。
政情が不安であることは,中国が政権を支配できることである。
しかし,ずっと面倒を抱え込むことである。
政情不安を無くす方法は,ソロモン諸島全国民を均しく豊かにすることであるが,これも簡単ではなくそして金がかかる。
この投資に見合うだけのものが返ってくるかというと,そうは期待できない。
豊かになった国民は,今度は頭の上の中国を煩わしく思うようになる。
そして他の国に色目を向けるようになる。
中国にはまた,ソロモン諸島を軍事基地化するのがいいか,しないのがいいか,の選択肢がある。
ソロモン諸島の中国軍事基地化は,アメリカ・オーストラリアをソロモン諸島の仮想敵国に定めることであり,これはソロモン諸島国にとって「援助」と釣り合う話ではない。
また,アメリカとの潜在的戦線をアメリカに大きく近づけることであり,これはアメリカの逆鱗に触れることである。
よって,ソロモン諸島の軍事基地化は,あり得ない。
ではひとは,ソロモン諸島規模のことでなぜ大騒ぎするのか?
「ドミノ倒し」のことばをずっと吹き込まれてきたからである。
ドミノ理論というのは,昔から当たったためしがない。
集団は結局,一様化に抗うようになっているのである。
ということで,ここは高見の見物を決め込んでよいところである。
中国のお手並みや如何,と。
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