Up ロフテッド軌道 作成: 2023-08-20
更新: 2023-08-20


    ひとは,弾道ミサイルが飛ぶのを,大砲の弾が飛ぶのと同じように思っている。
    特に,その軌道を放物線だと思っている。
    これは,弾道ミサイルが多段ブーストで加速をしていくものだということに,考えが至らないためである。

    多段ブーストで加速していく弾道ミサイル・弾頭の軌道は,ロフテッド軌道というものになる。
    ミサイルが真上に打ち上げられ,加速されつつ上昇する。
    最後のブースターが外れ,最高速度で弾頭が水平飛行の体勢になる。
    そして惰性で落ちていく。


    この軌道の要点は,「できるだけ打ち上げ地点の上空で,<最高速度で弾頭が水平飛行に到達>を完了する」である。
    なぜなら,弾道ミサイルが撃ち落とされるとすれば,それは加速途中の低速飛行のとき,ということになるからである。


    「弾道ミサイル」の解説サイトに,「軌道パターン」だと謂って,つぎの3種類を挙げているのを見ることがある:
    • Lofted orbit
    • Minumum energy orbit
    • Depressed orbit
    これは,間違い。
    弾道ミサイルの軌道は,「ロフテッド軌道」の一本で決まりなのである。
    なぜ?
    弾道ミサイルは,核弾頭を積むためのものである。
    そして核弾頭ミサイルは,最終兵器と位置づけることになるものであるから,最良の軌道で飛ばすことになる。
    最良の軌道で飛ばせば,これを防げるものは存在しない。
    弾頭ミサイルの軌道は,エネルギーをちまちまとケチったり小細工を弄したりするものではないのである。