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next_discovery, 2017-08-29
そして気になる命中率ですが、アメリカで行なった実験で、イージス艦搭載のSM-3は 89%。
PAC-3は 83% (新ソフト搭載後は100%)
と、かなり高いことがわかります。
専門家の中でも 90% 以上の確率で落とせると言っている方も多くいるため、命中率はかなり高いことがわかります。
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ネットでは,このような数が独り歩きしている。
その数の正体は?
つぎの計算で出したものである:
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産経新聞, 2016-03-01
〝無法〟北朝鮮の弾道ミサイル、打ち落とせるのか!…「SM-3」迎撃ミサイルの命中率
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SM-3 の開発には日本も参加し、その発射実験は米ミサイル防衛局により 2002年1月25日から開始。15年12月9日までに40回の発射実験を行った(類似の SM-6 ミサイルなど含む)。うち迎撃に成功したのは 33回で、成功率は 82.5 %だった。
ただし、失敗のうち3回はターゲットとなる模擬弾道ミサイルが故障するなどの理由で SM-3 は発射されず、迎撃の失敗というより実験準備段階での失敗だった。
これを考慮すれば実質 37 回。うち迎撃成功は 33 回で、成功率は 89.1%にまで上がる。
一方、撃ち漏らしを相手にする最後の盾の PAC-3 は、97年から始まった弾道ミサイル迎撃実験計35回(13年末まで)のうち、成功は29回。成功率は約 83 %だ。しかし、この実験は多くが実戦さながらの条件で実施されたことを考慮する必要がある。
発射日時を事前に知らせないのはもちろんのこと、弾道ミサイルと航空機の同時迎撃や、弾道ミサイル3発と巡航ミサイル2発の計5発同時迎撃など、厳しい条件下で行われた。
なかには1発の目標に対し2発を発射し、1発目で撃墜、2発目は破壊された弾道ミサイルの破片に命中するという驚異的なスコアもあった。
特筆すべきは、ミサイル誘導に新ソフトウェアを導入した 09年12月以降の成績だ。13年末までに14回実施し、失敗は一度もなく、100%の命中率を誇る。
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一方,つぎのような数値も:
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The New York Times, 2017-03-04
Trump Inherits a Secret Cyberwar Against North Korean Missiles
‥‥ Mr. Obama concluded that the $300 billion spent since the Eisenhower era on traditional antimissile systems, often compared to hitting “a bullet with a bullet,” had failed the core purpose of protecting the continental United States. Flight tests of interceptors based in Alaska and California had an overall failure rate of 56 percent, under near-perfect conditions. Privately, many experts warned the system would fare worse in real combat.
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"failure rate of 56 percent",即ち「命中率 44%」。
で,「いったいどうなんだ?」となるわけである。
数が独り歩きするのは,ひとが "If (条件), then (結果)" のロジックに弱いためである。
弱いので,"If (条件), then" を取り去って,"(結果)" だけにしてしまう。
迎撃ミサイルの命中率は,標的ミサイルをどんなふうに飛ばすかに,依存する。
"If (こんなふうに飛ばす), then (命中率はこう)" となるのである。
標的ミサイルを,迎撃ミサイルの射程外に飛ばす。
このときは,命中率0%である。
標的ミサイルを迎撃ミサイルの射程内に飛ばすときも,迎撃ミサイルに対しどんな弾道で飛ばすかによって,命中の難度が違ってくる。
そして,命中させやすい弾道で飛ばせば命中率は高くなり,命中させや難い弾道で飛ばせば命中率は低くなる。
(トートロジー^^; )
迎撃ミサイルの開発実験は,標的ミサイルを<最も命中させやすい弾道>で飛ばす。
89%だ,83%だ,新ソフト搭載なら100%だ,などと言っているのは,この場合である。
そしてそんな場合でも,場所を変えれば「44%」になったりする。
そして,肝心なことを忘れてはならない。
ミサイルは,迎撃ミサイルに撃ち落とされるために飛ばすのではない。
ミサイル開発は,迎撃ミサイルに撃ち落とされない方法の開発を,含んでいる。
日本人は,発想が「専守防衛」なので,ミサイル技術の右肩上がりを,「迎撃ミサイルの命中率が高くなる」で考える。
しかし,ミサイル攻撃する立場だと,ミサイル技術の右肩上がりは「迎撃ミサイルをかわせる率が高くなる」なのである。
というわけで,疑問。
ミサイルと迎撃ミサイルの両方を商品にしている軍需企業は,どういうことになるのだろう?
楚人 有 鬻盾与矛者。
誉之曰、
「吾盾之堅、莫能陥也。」
又 誉其矛曰、
「吾矛之利、於物無不陥也。」
或曰、
「以子之矛、陥子之盾、何如?」
其人弗能応也。
(韓非子)
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