Up | 台湾有事 : 要旨 | 作成: 2023-07-26 更新: 2023-07-26 |
戦争は,論理の帰結として勃発するのではない。 一方,評論家/専門家は,戦争を論理の帰結だと思って,論理の要素をあれやこれやと詮索する。 彼らは,そのあれやこれやをどれだけ引き出せるかが,自分のポイントになると思っている。 そして戦争は,彼らの説くあれやこれやがまったく関係ないものになるというわけである。 小さな軍事的衝突がエスカレートすれば,それは戦争にまで進む。 軍事的衝突のエスカレートは,止めにくい。 <腰抜け>に見られたくないからである。 「しゃーねーな,こうなったらやるしかないか,後のことは知らないぜ」で,戦争勃発になる。 台湾有事の形は,これになる。 ──《論理の帰結として勃発》といった上等なものにはならない。 台湾有事は,中国の侵攻である。 これは,<負かそう>と<負かされない>の攻防になる。 この攻防は,やがて一つの平衡を得る。 平衡を得るとは,<終わらない戦争>が出来上がるということである。 台湾が中国に負かされないのは,アメリカが台湾を軍事的に支援するからである。 アメリカは,中国とは戦争しない。 そもそも,アメリカは「中国は一つ」を択ったので,中国の台湾侵攻は中国の内政問題になる。 そしてアメリカは,核をもつ国と戦争するわけにはいかない。 日本もこれと同じ。 防衛省はいろいろ戦争のシミュレーションをしているが,戦争には踏み切らない。 その戦争は,どうにもならない戦争だからである。 繰り返すが,アメリカは中国とは戦争しない。 ロシアとも戦争しない。 したがって「日米安保条約」の意味は,「アメリカは日本に中国・ロシアと戦火を交えさせてはならない」なのである。 台湾有事においては,日本は身の振り方をアメリカから指導されることになる。 台湾有事で日本はどうなるか。 日本は台湾を支援することになる。 そもそも,日本はアメリカ軍を置く国であり,そのこと自体が既に台湾支援である。 中国にとって日本の台湾支援は,先島諸島を取る理由になる。 先島諸島は,地勢的に台湾支援の要所ということになるからである。 「台湾を支援するなら,これを占領する」という論理が立つ。 中国は,自分の権利だとして尖閣諸島を先ず取り,日米の反応を窺う。 日本は尖閣諸島を中国に取らせることになる。 尖閣諸島の奪還は軍事行動になり,これは中国との戦争になるからである。 日本は,中国と戦争するわけにはいかない。 その他の島も,中国艦隊で取り囲まれることになる。 日本政府は「安全優先」の立場から,先島諸島の住民を島から退去させる。 そしてこの退去は,再び戻ることの無い退去である。 台湾有事は<終わらない戦争>になるからである。 台湾有事は,中国にとっても割が合わない。 小さな軍事的衝突がエスカレートして戦争になることに警戒するのは,中国政府も同じである。 もう一つ警戒しなければならならぬものがある。 それは「軍事力」を勘違いする者たちである。 彼らは,軍事力の違いが戦争の勝敗を分けると思っている。 これは間違い。 軍事力の違いから導かれるものは,戦争の平衡の形──<終わらない戦争>の形──である。
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