Up 台湾有事のシナリオ : 要旨 作成: 2023-08-01
更新: 2023-08-01


    台湾有事のシナリオは,先ずつぎの類は除かれる:
      《台湾領有の諸島 (本島以外) を中国軍が占領》
    実際,これでは台湾の降伏に及ばない。

    つぎも除かれる:
      《台湾を海上封鎖 (兵糧攻め)》
    これも台湾の降伏に及ばない。
    アメリカの船艇・船舶は,これを無視する (突破する)。 中国はこれを武力攻撃できない。
    アメリカと連携する国・地域から,中国の船艇・船舶に対する同等の措置の報復を受けるだけである。

    台湾有事は,台湾本土への侵攻でなければ,台湾の降伏に及ばないのである。


    中国が台湾に侵攻するには,台湾の中で「事件」が起こる必要がある。
    台湾侵攻は,「台湾で勃発した事件を解決する」の形につくられるのである。
    よって,台湾有事のシナリオは,つぎに限られる:
      《台湾で,中国が策謀したクーデターが起こる。
       台湾政府は,これの制圧を発動する。
       中国は,クーデターを支援するとして,台湾に軍事侵攻する。》


    台湾は「国」を宣言していないので,中国が主張する「一つの中国」を立場にしていることになる。
    台湾を支援することになるアメリカや日本も,「一つの中国」を立場にしている。
    よって,アメリカや日本の台湾支援は,中国への内政干渉ということになる。
    中国は,アメリカや日本の台湾支援に対し,「内政不干渉」を主張できる。

    実際この場合,台湾支援にアメリカや日本が付ける理由は,「民主派を守る」になる。
    アメリカはこれまで,内戦の国・地域において「民主派(?)への支援」をいろいろやってきたが,これと同じ形になるわけである。
    そしてこの度アメリカや日本がしようとしていることは,中国を攻撃するわけではないから,「中国における<対立する二つの派の並立体制>を保守する」になる。
    理由もアウトプットも,なんとも(さま)にならない。
    しかし,ここに登場する国がすべて「一つの中国」を立場にしている以上,しようがない。

    様になるようにするには,中国が台湾侵攻を開始したところで,台湾が国であることを宣言する。
    そして,アメリカや日本が,台湾国の承認を宣言する。
    アメリカや日本の台湾支援は,中国から侵攻されている国への支援という形になり,すっきりする。


    中国の軍事力は,台湾の軍事力を圧倒する。
    しかし,中国は台湾を降伏させることはできない。
    なぜか?

    侵攻の主力は揚陸部隊だが,揚陸艇母艦がアメリカの艦艇に押さえ込まれ,揚陸に成功しない。
    航空機やヘリから兵隊をパラシュートで降下させるのは,航空機・ヘリが簡単に撃ち落とされてしまうので,これも成功しない。

    残るはミサイルや無人機による攻撃だが,これでは台湾を降伏させることはできない。
    しかもこの度は,ミサイルや無人機による攻撃は,民間を標的にすることができない。
    中国の立場では,台湾民衆は敵国民ではなく自国民であるから,ミサイルや無人攻撃機で殺傷するわけにはいかないのである。


    台湾は,痛めつけられるが,降伏しない。
    しかも,台湾国になった。
    そして台湾支援国は,中国に対し制裁をさまざまに措置してくる。
    中国は,名も実も取れない。
    台湾侵攻は,中国にとってまったく割の合わない戦争になる。

『2023年版 防衛白書』, I-3-3 から引用:
台湾軍の配置



中台軍事力の比較




  • 引用文献
    • 防衛省『2023年版 防衛白書』