Up 太陽活動と氷河 作成: 2021-12-21
更新: 2023-09-22


    氷河が同じ姿であるとは,つくると消えるが均衡しているということである。
    氷河が後退しているとは,氷河がつくられていないということである。

    氷河をつくるものは,雪である。
    そして,雪のもとは雲である。
    よって,氷河が後退しているとは,雲が少なくなっているということである。
    <雲減少 → 雪減少 → 氷河後退>である。


    ひとは,<気温上昇 → 氷河後退>だと思っている。
    氷河後退を「氷河が融ける」だと思っているのである。
    事実は,氷河後退は「氷河をつくる雪が降らない」である。

    「氷河が融ける」を取り上げるにしても,その因果は<雲減少 → 日照量増加 → 氷河周辺温度の上昇 → 氷河が融ける>である。
    そしてこの「氷河が融ける」は,「氷河がつくられない」に比べて桁違いに小さい。
    無視してよいものである。

    よって,繰り返すが,<雲減少 → 雪減少 → 氷河後退>である。
    因果関係を間違わぬよう。


    こうして,気候変動は,雲量変動として考えることになる。
    そこで問題は :
      「雲量変動は,何がこれをもたらしているのか?」

    雲量変動の系は複雑系である。
    この問題の解は,シンプルではあり得ない。
    それでも,シンプルな主調(main tone)を考えたくなる。
    科学は,ここをがんばりどころにする。

    そのようなトライとして,ここに Bond (2001) を引く。


    Bond (2001) は,北極気候変動が太陽活動に連動していることを,データで示す:
      北極気候変動を,年代ごとの<氷河が海域Aへ運ぶ礫の量>に表現する。
      太陽活動を,磁場変動として,年代ごとの<炭素14 (14C) とベリリウム10 (10Be) の量>に表現する。
      この2つの表現は,つぎのように重なる:
礫量 ─ 14C 量
礫量 ─ 10Be 量

    太陽活動と氷河生成は,どうつながるか?
    こういうストーリーになる:
      太陽活動が弱る
      → 地球を覆う太陽磁場の宇宙線遮蔽力が弱り,地球に降り注ぐ宇宙線量が増加
      → 雲量が増加
      → 雪増加
      → 氷河前進
      太陽活動が強まる
      → 地球を覆う太陽磁場の宇宙線遮蔽力が強まり,地球に降り注ぐ宇宙線量が減少
      → 雲量が減少
      → 雪減少
      → 氷河後退

    ここで<宇宙線 → 雲>は:
      <宇宙線 → 二次宇宙線 → 微粒子=雲核 → 雲>


    さて,<宇宙線 → 二次宇宙線 → 微粒子=雲核 → 雲>は本当か?
    仮に本当だとして,こうしてつくられる雲は,氷河をつくるのに必要な雲量とどんな関係に?──決定的関与なのかそうでないのか?

    この問題は,ここではペンディングとするのみである。


  • 引用文献
     G.Bond, et al. (2001) :
      Persistent Solar Influence on North Atlantic Climate During the Holocene,
      Science, vol.294, 2001. pp.2130-2136.

  • 参考Webサイト