Up | アルプス氷河と大西洋熱塩循環の関係 | 作成: 2022-09-13 更新: 2022-09-13 |
温室効果ガスは,これが2倍になれば温室効果も2倍,といったものではない。 地球の気温変動は,100万年ほど前から氷期と間氷期のサイクルを描くようになっている。 そしてそれから10回目くらいの気温上昇ピークのところに,いまがある。 ひとはこの気温変動の歴史を知らないので,気温変動はいま始まったものだと思い込んでいるのである。 気温変動は,自然の摂動である。 この摂動は,様々なフィードバックが複雑に絡み合っていて,「これが気温変動のダイナミクスだ」みたいにはとても言えない。 ひとは,「CO2排出による地球温暖化のために,アルプス氷河が消失している!」を聞かされ,氷河の後退をいま始まったもののように思っている。 事実は,アルプス氷河の後退も,前進と後退のサイクルの中にある。 1910年以降でも,つぎのように変動している: |
(a) | 11‐year running mean [平均] of the annual glacier melt anomaly [偏差] averaged over the 30 glaciers |
(b) | annual accumulation and precipitation [降水] anomaly (deviations [偏差] from the 1908–2008 average [平均] ). |
この変動も,様々なフィードバックの複雑な絡み合いの結果である。 そのフィードバックの一つに,大西洋熱塩循環がある ( Huss et al., 2010)。 海氷形成では,氷から排出される塩分によって,海水の塩分濃度が増加する。 北大西洋では,冷却とこの塩分濃度増加によって密度の大きくなった海水が,深部へと沈み込む。 そして, 「熱塩循環 (thermohaline circulation)」として循環する。 この循環は,北大西洋において 50〜70年周期の海水面温度変動パターンを現す (Atlantic multidecadal oscillation, AMO)。 この変動に,様々なフィードバックの絡み合いの結果として,気温変動が連動する。 そしてこの気温変動に,様々なフィードバックの絡み合いの結果として,氷河長変動が連動する: |
(c) | Annual mass balance [収支] anomaly.
A sinusoid [sine curve] superimposed on a linear trend is shown. |
(d) | Atlantic Multidecadal Oscillation index |
Parameters of the sine function in Figures 3c and 3d are based on least square fits. |
(a) | Reconstructed AMO index |
(b) | summer (JJA) air temperature from instrumental data in the Greater Alpine Region (11‐year low‐pass filtered) |
(c) | Observed length change of U. Grindelwaldgletscher;
blue lines indicate phases of glacier advance in response to cooler temperatures. |
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