Up 「絶対平均気温」 作成: 2021-08-17
更新: 2021-08-18


    「地球温暖化」「気候変動」をタイトルとするテクストには,「地球の平均気温」ということばが出てくる:
      工業化前の時代より地球の平均気温が○度上昇した
      二酸化炭素排出量がいまのままだと,○年後には地球の平均気温が○度上昇する

    ひとはこの文言に対して「へえー,そうなんだ」と思う。
    賢くなった気になって,このことばの受け売りを始める。

    ひとが「地球の平均気温」をかんたんにわかったつもりになるのは,小学校で「平均気温」を勉強したからである。
    その「平均気温」は,場所を固定し定時的に測定した気温の平均である。
    この「平均気温」を知っていることが,「地球の平均気温」をわかったつもりにさせる。
    ひとは,自分の知っていることと言葉が同じものには,わかったつもりになるのである。


    「地球の平均気温」は,「これって何よ?」の問いが先ず起こらねばならない言葉である。
    しかしひとは,この問いがあることに,思い及ばない。

    ここは,ちゃんと考えるところである。
    小学生のままでいたら,騙される。


    地球の平均気温」の定義
    「地球の平均気温」は,時刻tを固定したときの「tにおける地球の平均気温」ということになる。
    「tにおける地球の気温」は,つぎの関数である:
      ft : 地球表面の各点P├─→ tにおけるPでの気温
    この関数のグラフは,地表の各点Pに棒を立て,tにおけるPでの気温を棒の高さで表した絵である。
    気温は連続なので,この絵は地球を覆う波状の面になる。


    さて,この「tにおける地球の気温」の「平均」とは何か?
    何で平均するのか?
    地球の表面と ft 面にはさまれた空間の体積を地表の面積で割る?

    体積と面積の計算からしてどだいできるものではないが,仮にできたとしてもこの「平均」にどんな意味があるのか?
    「時刻tに存在している哺乳動物すべての身長の平均」くらいに,意味がない。

    一般に,対象空間が大きくなると,平均は意味がなくなるのである。
    「東京のt時の平均気温」は使うことがあるかも知れぬが,「日本のt時の平均気温」は使い途がない。