Up 階層構造/複雑系 作成: 2022-01-09
更新: 2022-01-09


      余田成男 (2011), pp.473,474
    水蒸気の凝結やオゾンの光化学生成などは分子レベルで起きているが, これらの物質が生成し輸送され, 消滅する過程は地球規模にまで及ぶので. 対象とする空間規模は 10-9 mから 107 mまでの広がりをもつ
    これは宇宙の空間規模の範囲に比べると十分小さいが, 人間が直接認識できる範囲よりも十分に大きい空間規模範囲をもつ。
    このような幅広い範囲で生起する諸現象は,互いに独立ではなく,相互に関連して変動している。
    たとえば, 水蒸気 (その空間規模 〜10-9 m) が凝結して雲粒 (10-6 m - 10-4 m) となり, その莫大数の集合が雲 (102 m - 104 m) であり, 雲の集団としての塊はクラウドクラスター(〜105 m) と認識され, さらにそれが組織化されて熱帯低気圧やスーパークラウドクラスターなどの大規模気象擾乱 (〜106 m) を構成する。
     地球気候システムのなかで,このような幅広い空間規模範囲で生起する諸現象の階層構造を認識しそれらの連結過程を考えることによって, 階層間の相互の関係が明らかになり気候システムの予測が可能となる。

      同上, p.490
    全球の雲被覆面積の変動に影響が及ぶには, 個々の雲が集団化しさらに大きな空間スケールの大気運動・循環と相互作用しその結果として被覆面積が変動する必要がある。
    特に, 大気の上昇下降運動は雲の形成に決定的であるので,水蒸気分布と大気循環の時間空間階層構造を認識しそれらの階層聞の連結過程を考えることによって, はじめて地球規模での雲分布の変動が理解できることになる。



    引用文献
     余田成男 (2011) : 太陽活動変動の地球気候への影響
      所収 : 柴田一成・上出洋介 [編著]『総説 宇宙天気』, 京都大学学術出版会, 2011