ひとにとって「太陽活動」の意味は,太陽が地球に及ぼす作用である。
そしてひとは,この作用を気温に表現してきた。
ひとは,太陽が気温に表現されるしくみを,太陽が発する「光熱」で考える。
その「光熱」とは,何か?
可視光を中心帯域とする電磁波である。
地球の気温のもとが太陽の発する光熱であることは,間違いない。
しかし,ここから「地球の気温変動は,太陽が発する光熱 (エネルギー) の変動がもと」と進めると,これは間違いになる。
なぜなら,電磁波のエネルギー変動は,平均エネルギーの 0.15%程度。
この程度の変化では,地球の気温変動の大きさにはならない。
註: |
というわけで,気象学者の大勢は,地球の気温変動のもとは太陽ではないとしてきた。
「CO2排出地球温暖化」イデオロギーに気象学者が雪崩を打って参じたのは,彼らのこの認識が一因になっている。
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地球に作用する太陽活動は,光熱放射だけではない。
地球に作用する太陽活動は,光熱放射と磁気放射の2つである。
気温変動のもとを太陽に求めるとき,光熱放射の変動はそれではない。
可能性として残るのは,磁気放射の変動──太陽磁場の変動──だけである。
さて,「地球の気温変動は,太陽磁場の変動がもと」となるのか?
これを調べることにする。
太陽磁場の強弱は,地球からの観測では何を以て知られるか?
地球に飛来する宇宙線量を以て,関接的に知られる。
即ち,つぎのようになるわけである:
宇宙線量が多いのは,太陽磁場が弱いということ。
宇宙線量が少ないのは,太陽磁場が強いということ。
註: |
宇宙線は荷電物質の飛行であり,したがって「電流」である。
宇宙線が太陽磁場で遮蔽される原理は,フレミングの左手の法則である
──横方向の力がかかって,進路を曲げられる。
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宇宙線量の変動は,どうしたらわかるか?
「宇宙線生成核種」を用いる。
地球圏に入ってきた宇宙線は,窒素や酸素原子等に衝突して,いろいろな核種を生成する。
そこで,宇宙線量の変動は,それら核種の生成量の変動に表現されることになる。
宇宙線生成核種のあるものは,木の年輪とか地層・氷層に,年代ごとに保存される。
年輪では炭素14,地層・氷層ではベリリウム10 が,このようなものになる。
Steinhilber (2012) より:
そこで,炭素14,ベリリウム10 の量がどう変化してきたかを,年代ごとに調べることにする。
結果は,例えばつぎのようになる:
Steinhilber (2012) より:
PC, GR, D3, NG, MI, SP, DF は,データ名。
黒色は炭素14 (木の年輪から),赤色はベリリウム10 (南極の氷床から),緑色はベリリウム10 (グリーンランドの氷床から)。
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上のグラフで,O, W, S, M, D, G の橙色の帯は:
O | : Oort 極小期 |
W | : Wolf 極小期 |
S | : Spörer 極小期 |
M | : Maunder 極小期 |
D | : Dalton 極小期 |
G | : Gleissberg 極小期 |
「極小」とは「太陽黒点極小」の意味である。
グラフは,黒点数と宇宙線量が相反関係にあることを示している:
太陽黒点が消失するときは,宇宙線量が多いとき。
太陽黒点の数が多いときは,宇宙線量が少ないとき。
ところで黒点数は,気温変動とつぎの関係にあった:
黒点数が消失するときは,気温が低いとき。
黒点数が多いときは,気温が高いとき。
そこで,つぎが導かれる:
宇宙線量が多いと,気温が下がる。
宇宙線量が少ないと,気温が上がる。
こうして,「地球の気温変動は,宇宙線量の変動 (←太陽磁場の変動) がもと」という結論になった。
気温の由来は太陽が発する光熱なので,素直に考えると「地球の気温変動は,太陽が発する光熱の変動がもと」となる。
しかしそうではないというわけである。
- 引用文献
- Steinhilber,F. et al. (2012) :
9,400 years of cosmic radiation and solar activity from ice cores and tree rings
PNAS, vol.109 (no.16), pp.5967-5971
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