Up 宇宙線と気温変動 : 要旨 作成: 2022-01-02
更新: 2022-01-02


    ひとにとって「太陽活動」の意味は,太陽が地球に及ぼす作用である。
    そしてひとは,この作用を気温に表現してきた。

    ひとは,太陽が気温に表現されるしくみを,太陽が発する「光熱」で考える。
    その「光熱」とは,何か?
    可視光を中心帯域とする電磁波である。

    地球の気温のもとが太陽の発する光熱であることは,間違いない。
    しかし,ここから「地球の気温変動は,太陽が発する光熱 (エネルギー) の変動がもと」と進めると,これは間違いになる。
    なぜなら,電磁波のエネルギー変動は,平均エネルギーの 0.15%程度。
    この程度の変化では,地球の気温変動の大きさにはならない。

     註: というわけで,気象学者の大勢(たいせい)は,地球の気温変動のもとは太陽ではないとしてきた。
    「CO2排出地球温暖化」イデオロギーに気象学者が雪崩を打って参じたのは,彼らのこの認識が一因になっている。


    地球に作用する太陽活動は,光熱放射だけではない。
    地球に作用する太陽活動は,光熱放射と磁気放射の2つである。
    気温変動のもとを太陽に求めるとき,光熱放射の変動はそれではない。
    可能性として残るのは,磁気放射の変動──太陽磁場の変動──だけである。
    さて,「地球の気温変動は,太陽磁場の変動がもと」となるのか?
    これを調べることにする。


    太陽磁場の強弱は,地球からの観測では何を以て知られるか?
    地球に飛来する宇宙線量を以て,関接的に知られる。
    即ち,つぎのようになるわけである:
      宇宙線量が多いのは,太陽磁場が弱いということ。
      宇宙線量が少ないのは,太陽磁場が強いということ。

     註: 宇宙線は荷電物質の飛行であり,したがって「電流」である。
    宇宙線が太陽磁場で遮蔽される原理は,フレミングの左手の法則である ──横方向の力がかかって,進路を曲げられる。


    宇宙線量の変動は,どうしたらわかるか?
    「宇宙線生成核種」を用いる。

    地球圏に入ってきた宇宙線は,窒素や酸素原子等に衝突して,いろいろな核種を生成する。
    そこで,宇宙線量の変動は,それら核種の生成量の変動に表現されることになる。

    宇宙線生成核種のあるものは,木の年輪とか地層・氷層に,年代ごとに保存される。
    年輪では炭素14,地層・氷層ではベリリウム10 が,このようなものになる。
Steinhilber (2012) より:


    そこで,炭素14,ベリリウム10 の量がどう変化してきたかを,年代ごとに調べることにする。
    結果は,例えばつぎのようになる:
Steinhilber (2012) より:
PC, GR, D3, NG, MI, SP, DF は,データ名。
黒色は炭素14 (木の年輪から),赤色はベリリウム10 (南極の氷床から),緑色はベリリウム10 (グリーンランドの氷床から)。


    上のグラフで,O, W, S, M, D, G の橙色の帯は:
        O: Oort 極小期
        W: Wolf 極小期
        S: Spörer 極小期
        M: Maunder 極小期
        D: Dalton 極小期
        G: Gleissberg 極小期

    「極小」とは「太陽黒点極小」の意味である。
    グラフは,黒点数と宇宙線量が相反関係にあることを示している:
      太陽黒点が消失するときは,宇宙線量が多いとき。
      太陽黒点の数が多いときは,宇宙線量が少ないとき。

    ところで黒点数は,気温変動とつぎの関係にあった:
      黒点数が消失するときは,気温が低いとき。
      黒点数が多いときは,気温が高いとき。
    そこで,つぎが導かれる:
      宇宙線量が多いと,気温が下がる。
      宇宙線量が少ないと,気温が上がる。


    こうして,「地球の気温変動は,宇宙線量の変動 (←太陽磁場の変動) がもと」という結論になった。
    気温の由来は太陽が発する光熱なので,素直に考えると「地球の気温変動は,太陽が発する光熱の変動がもと」となる。
    しかしそうではないというわけである。


  • 引用文献
    • Steinhilber,F. et al. (2012) :
        9,400 years of cosmic radiation and solar activity from ice cores and tree rings
        PNAS, vol.109 (no.16), pp.5967-5971