Up 気象学者の<流体粒子>物性観 作成: 2022-10-21
更新: 2022-10-21


      日本気象学会 (1998), pp.41,42

    水の入った円筒容器を回転台に載せ, 台を北半球と同じ反時計回りに回転させる.
    充分に時間がたつと, 容器内の水は回転台と一緒の回転数Ωで剛体回転するようになる.
    このとき, 水面の形は中心がくぼんだ放物面となる.
    これは, 回転する水に遠心力が働き, 内筒の縁に押しつけようとするからである.
    単位質量の流体に働く遠心力の大きさは,Vを接線方向の速度,rを回転の中心からの距離と
    するとき, V2/r で与えられる.
    水は角速度Ωで剛体回転しているので, Vは Ωrで与えられ. 遠心力は Ω2r と書ける.
    遠心力が働くにもかかわらず,容器内に外向きの流れがないのは, 水深の違いで生ずる内向きの圧力傾度力が遠心力と釣リ合っているからである.


    上は,気象学が自転体上の流体粒子に対して抱いている物性観である。
    気象学にとって自転体上の流体は,剛体回転である。
    気象学はこの捉えから,自転体上の流体粒子の運動を「角運動」と定める。

    しかし,彼らが設定する「内筒の縁」は,実在しない。
    「内筒の縁を用いて,流体粒子が剛体回転に慣れるようにする」はできない。

    それ以前に,「自転体上の流体粒子が剛体回転に慣れる」という考えは,荒唐無稽である。
    流体粒子に対するその訓練は,定めし,小さな回転速度から始めて,段々と回転速度を上げていくのであろう。
    しかし流体粒子は,どんなに小さな回転速度でも,外へ動いてしまう。
    訓練から逃げてしまうのである。



  • 引用文献
    • 日本気象学会 (1998) : 日本気象学会編『新 教養の気象学』, 朝倉書店, 1998.