Up ポテンシャル主義/ワープ主義 作成: 2022-09-23
更新: 2022-09-23


問題:ここに高低差が同じ3つのスロープがある。
   上から玉を転がすとき,いちばんスピードが出るスロープはどれ?
    これは,引っ掛け問題である。
    どんなタイプの者が引っ掛けの対象かというと,学校で「落下速度」を学んだ者である。


    彼らはつぎのように学んだ:
      「 落下速度は高低差で決まる。
    実際,高低差は位置エネルギーの差を示し,そして落下は,<高さ>に示される位置エネルギーを運動エネルギーに変換するダイナミクスである。
    そしてこの変換を計算すると,速度は高低差だけで決まり,物体の質量にも依らない。」

    これが偏って身につくと,ポテンシャル主義者──行程を閑却するワープ主義者──になる。
    先の問題は,この彼らに対する引っ掛け問題なのである。
    彼らは,「高低差が同じなので同じ速さ!」と答える。

    実際は,各スロープを相手に,個別に計算して答えを出すしかない。
    計算は,微小に区分された<位置エネルギーから運動エネルギーへの変換で導かれる速度>──これは傾斜に依存──を積んでいく計算である。
    この作業に近道は無い。


    大気の移動の計算も,もしやろうとするならばだが,これと同じ格好になる。
    途方も無い作業になることは,目に見えている。
    実際,本サイトは,
      <最も単純な設定&移動物体の捨象>をした「速度ベクトルの移動方程式」
    の作業だけでも,どのくらいのものになるかを示してきた。

    しかし気象学は,「大気の移動」の主題においてポテンシャル主義/ワープ主義者である。
    気象学は,大気に「角運動量」というポテンシャルをもたせ,大気の速度をこのポテンシャルの増減で説明しようとする。
    気象学は,「落下する物体の速度は,落下距離 (高低をどれだけワープしたか) で決まる」のように,「移動する大気の速度は,緯度をどれだけワープしたかで決まる」と唱えるのである。