Up 「見かけの力」の正しい文脈 作成: 2022-10-21
更新: 2022-10-22


    気象学が「コリオリ力=見かけの力」を導入する仕方を,確認しておく。

    設定は,自転体上の直進。
    ここで「自転体上」の「上」は,on ではなく over である。
    即ち,自転体の回転から独立していることが,肝心なところである。

    「自転体上の直進」をつぎのように措く:
      角速度 \( \Omega \) で自転する円板
      この円板上 (over) の速度 \( \bf{v} \) の移動
      この移動が,いま円板の中心 \( O \) に向かっている

    円板に寝そべってこの移動を見上げるとき,時間 \( \Delta t \) の移動がつぎのように見える:
    速度 \( \bf{v} \) が速度 \( {\bf{v}}' \) に転向しているが,これは自分が回転しているせいである。

    しかし,この観察者は「その転向は自分が回転しているせい」がわからない者であるとしよう。
    この者は,転向を加速度のせいにする。
    この加速度は,つぎの \( \bf{a} \) である:
      \[ \frac{ {\bf{v}}' - {\bf{v}} }{ \Delta t } \longrightarrow {\bf{a}} \quad ( \Delta t \rightarrow 0 ) \]

    \( {\bf{a}} \) を計算しよう。
    (但し,以下の計算は気象学のものとは違う──気象学は「角運動量」を持ち出す。)
    つぎのように座標軸を設ける:

    \( v = | {\bf{v}} | \) とおくと,\( {\bf{v}} = ( v_x,\ v_y ),\ {\bf{v}}' = ( v'_x,\ v'_y )\) は:
      \[ v_x = -v \\ v_y = 0 \\ v'_x = - v\ cos( \Omega\ \Delta t ) \\ v'_y = - v\ sin( \Omega\ \Delta t ) \\ \]
    そして
      \[ \frac{ v'_x - v_x }{ \Delta t } \ \ = v\ \frac{ 1 - cos( \Omega\ \Delta t )}{ \Delta t } \ \ = v\ \Omega^2\ \Delta t\ \frac{ 1 - cos( \Omega\ \Delta t )}{ ( \Omega\ \Delta t )^2 } \\ \ \\ \quad \longrightarrow 0 \quad ( \Delta t \rightarrow 0 ) \\ \ \\ \ \\ \frac{ v'_y - v_y }{ \Delta t } \ \ = - v\ \frac{ sin( \Omega\ \Delta t ) }{ \Delta t } \ \ = - v\ \Omega\ \frac{ sin( \Omega\ \Delta t ) }{ \Omega\ \Delta t } \\ \ \\ \quad \longrightarrow - v\ \Omega \quad ( \Delta t \rightarrow 0 ) \\ \]
    よって,
      \[ {\bf{a}} = ( 0, - v\ \Omega ) \]

    質量に加速度を乗じると力になる。
    質量に加速度 \( \bf{a} \) を乗じたときの力を,気象学は「コリオリ力=見かけの力」と言う。


    しかし「見かけの力」なら,わざわざ主題化する必要はないのである。
    「見かけの力」に用途は無い。

    実際,自分が回転していることを知る者には,「見かけの力」は見えない
    この者には,直進軌道の回転が見える。
    直進の直線が曲がって見えることはない。
    直進は直進として見えるのみである。

     「曲がって見える」は,「目が節穴」という話  


    以上が,「見かけの力」の正しい文脈である。