Up 気象学は「コリオリ力」の謬説を発信する :
気象庁監修『総観気象学』
作成: 2022-07-08
更新: 2022-07-08


    気象庁監修・北畠尚子著『総観気象学』(2019) は,気象庁の気象学教科書ということになる。
    このテクストも,「コリオリ力=見かけの力」である。
       『総観気象学 理論編』「1.1.2 大気の運動の特徴とその要因」から:
      地球が⾃転している。このために⼤気は⾓運動量を持つ。 また地⾯に相対的には回転系にあり、コリオリ⼒が⾒かけの⼒として働く。
      地球が球形をしていることにより、⼤気は球⾯上にあり、コリオリ⼒の緯度変化が⽣じる。

    気象予報士試験は,このテクストに準拠することになる。
    「コリオリ力=見かけの力」の発信の大元は,やはり気象庁である。


    なお,このテクストのコリオリ力の捉えは,つぎの通り:
       『総観気象学 理論編』「1.4.2 コリオリ力」から:
    ‥‥ 地球上で地球に対して速度 \( (𝑢, 𝑣, 𝑤 ) \) で運動している物体について考える。
    まず、緯度 \( \phi \) において単位質量の物体が地⾯に対して東向きに速度 \( u \)で運動しているとすると、それにかかる遠⼼⼒は \[ \bigl( \Omega + \frac{u}{R} \bigr) ^2 \ {\bf R} = \Omega ^2 {\bf R} + \frac{ 2 \Omega u {\bf R}}{R} + \frac{ u^2 {\bf R}}{R^2} \quad \quad (1.4.3) \] となる。
    \( R \) は⾃転軸からの距離である。
    [ \( \Omega \) は地球自転の角速度,\( {\bf R} \) は自転軸からの位置ベクトル 。]
    右辺第1項は前項で⾒た、地球上に静⽌した物体にもかかっているように⾒える遠⼼⼒であり、第2項と第3項が物体の運動に伴って新たに⽣じる⾒かけの⼒の成分である。
    \( u \) として総観規模現象の⾵速を考えると、\(10 m s^{-1}\) のオーダーであり、⼀⽅、\( \Omega R \) は中緯度では \(10^2 ms^{-1} \) のオーダーとなるので、右辺第3項は第2項と⽐較して無視できる。
    このため、第2 項について考えると、地球上に固定した座標系から⾒た場合に、この物体には⾃転軸から離れる⽅向に \( 2 \Omega u \) の⼤きさの⼒が働いていると考えることができる (図1.6)。
    このような⾒かけの⼒をコリオリ力(Coriolis force)と呼ぶ。
     ‥‥
    図1.6 緯度 \( \phi \) の地点において東⻄⾵ \( u \) により⽣じるように⾒えるコリオリ⼒。

    「コリオリ力」を,遠心力の計算式の中に措定している!
    噴飯物の牽強付会である。

    「コリオリ力」の正しい捉えは,こちら: