Up 『気象学は「偏西風」を間違う』: はじめに 作成: 2023-01-30
更新: 2023-01-30


    気象学を勉強しようとすると,困ることがある
    気象学の教科書本は理論編から始まるのだが,その理論がいかにも嘘っぽいのである。

    実際,その中に必ず出てくる「コリオリ力」なんかは,明らかな間違いである。
    このとき「コリオリ力」を要素にしている概念・理論はすべて無効ということになるのだが,その分量は理論編の大半を占める。


    気象学は,そもそも「大気」の存在論をはなから間違っている観がある。
    大気は,self-reflection のダイナミクスを以て self-organising する系である。
    ここには<主体 subject>が存在しない。
    <主体>が存在しないから,作用・反作用というものも存在しない。
    (気象を論じるなかで「作用・反作用」のことばを使うときは,方便としてこのことばを使うのである。)
    しかし気象学は,「空気のかたまり」とか「空気のチューブ」をあたりまえのように言う。

    気象学がこんなふうになる理由は,気象学教科書の理論編の構成からわかる。
    それは,「ボイル=シャルルの法則」から始める。
    <閉じた空気>から始めるのである。
    この<閉じた空気>論に馴らされると,「空気のかたまり」を言うようになる。

    気象学は,「空気のかたまり」が森をさまようメルヘンを紡ぎ出す。
    狼みたいな存在が現れ,「空気のかたまり」はこれらとわたり合う。
    その森は,「気圧配置」である。
    実際,気象学は「気圧」が好きである。
    「気圧」が好きなのは,気象を「空気のかたまり」が森をさまようメルヘンにできて,簡単だからである。

    事実は,空気は空気の外に出られない。
    空気と気圧は分けられない。
    気圧が空気に作用するという絵図は,存在しない。
    実際,「気圧」の概念はひじょうにミスリーディングである。


    というわけで,気象学の理論の嘘を押さえてみることにした。
    素材は「偏西風」。

    「偏西風」を選ぶ理由は,一つは,「コリオリ力」等の力学概念の誤用や「空気のかたまり」の存在論が集約しているところなので,短く論ずるのに都合がよい,ということ。
    そして理由のもう一つは,つぎの図は間違いであるが気象予報士たちのドグマになっている,ということである:
『気象ハンドブック』, p.122:



  • 引用文献
    • 朝倉正・他[編]『気象ハンドブック』, 朝倉書店, 1995.