Up 気象学は「エントロピー」を知らない 作成: 2023-05-16
更新: 2023-05-16


山賀進「大気と太陽エネルギー」から:


Hartmann (2016), §2.6 から:
単位: W/m2


    気象学の「地球の熱収支」の絵の要点は,右半分の上部の「72(%)」(山賀),「239」(Hartmann) である。
    この数値は,地球に届く太陽放射のうち反射されなかった部分の数値 ( アルベド) と同じにしたものである:

    気象学はここで,「入った分はそっくり出て行く」の考えを示しているわけである。
    どうして「入った分はそっくり出て行く」?
    つぎのように考えるからである:
      地球の温度は平衡状態にある。
       入った分がそっくり出て行くのでなかったら,平衡状態ではいられない。


    気象学のこの考えは,間違いである。
    入った分がそっくり出て行ったら,地球は冷える一方になる。
    なぜ?
    地球の中では,「エントロピー増大則」が働いているからである。

    仕事エネルギーは,非仕事エネルギーであるところの熱エネルギーに変わる。
    この変化は,不可逆である。
    そしてこの変化は,系の温度が下がる変化である。

    こういうわけで,地球が温度の平衡を保つ形は,「仕事エネルギーを外部からとり続ける」なのである。 ──「留まるためには走り続けなければならない!」(「赤の女王」)。


    では,大気圏の中から外へ出て宇宙に向かう放射線 (電磁波/光子) は,強さ (進行方向に垂直な単位面積が単位時間に受けるエネルギー) がどれくらいなのか?
    これはわからない。
    計測・計算のしようがないからである。