Up 熱をエネルギーと錯覚するのはどうして? 作成: 2024-07-14
更新: 2024-07-14


    気象学は,つぎのように連想する:
        熱 → 熱量 → エネルギー (位置エネルギー potential energy)
    そしてこの思いで,「熱エネルギー」のことばを使う。


    現代物理学では,「熱エネルギー」は,<乱雑さ (エントロピー) が一方的に大きくなる系>の量として,導入される。
    そして「温度」が,熱エネルギーに対する乱雑さの変化率というものになる。
    即ち,乱雑さの一方的増大は,つぎに対応している:
      • 熱エネルギーの単調増加
      • 絶対零度を下限とする温度の単調減少


    こうして,乱雑さの最大に,熱エネルギーの最大と絶対零度が対応する。
    <乱雑さ (エントロピー) が一方的に大きくなる系>は,熱エネルギーが一方的に大きくなる系であり,乱雑さ最大を以て絶対零度になる系である。


    このように,現代物理学の「熱エネルギー」は,位置エネルギーではない。
    しかし気象学は,「熱エネルギー」を位置エネルギーの意味で使い,温度が異なる2つの系の間には仕事が発生すると考えるのである。

    気象学がこんなふうなのは,「エネルギー」と「エネルギーの現象」を区別する概念が無いためである。

    位置エネルギーのうちには,「位置が高いほど温度が高い」が現象になるものがある。
    その位置エネルギーが異なる2つの系の間には,仕事が発生する。
    しかし気象学は,これを勘違いして,「温度が異なる2つの系の間には仕事が発生する」と思う。
    そして,温度の元として「熱エネルギー」を立てているので,その仕事を「熱エネルギー」のことばで説明しようとするのである。


    気象学のテクストに「熱エネルギー」のことばが出てきたら,即これを無視すべし。
    そして,「熱エネルギー」と勘違いされている位置エネルギーが実際は何なのか,改めて自分で押さえるべし。