Up 「○hPa 面天気図」 作成: 2023-09-08
更新: 2023-09-08


    高層天気図は,「高度○km 面天気図」ということになる。
    しかし実際に天気図になっているのは,「○hPa 面天気図」である。

    「高度○km 面天気図」は,つぎを表す:
      「地表の点Pの上空 ○km のところは,気圧が p hPa,気温が t °C,‥‥」
    これに対し「○hPa 面天気図」は,つぎを表す:
      「地表の点Pの上空 ○hPa のところは,高度が h km,気温が t °C,‥‥」


    地表天気図は「高度0km 面天気図」だから,これの延長で高層天気図を考えれば,「高度○km 面天気図」が自然である。
    では,高層天気図が「○hPa 面天気図」になっているのはどうしてか?

    高層天気図は,「○hPa 面天気図」でスタートした。
    「○hPa 面天気図」でスタートしたのは,当時の技術的制約からである。

    高層の天気のデータは,ラジオゾンデでとるのが基本である。
    今日は高度は GPS でわかるので,高度ごとに気圧,気温等々を計測するということができる。
    しかし昔は,ラジオゾンデに乗せる高度計みたいのは無い。
    そこで,区切りのよい気圧 ( 850hPa, 700hPa, 500hPa, ‥‥ ) ごとに気温等々の値をとる,というようにした。
    気圧に対する高度は,計算で導く (「測高公式」)。
    こうして「地表の点Pの上空 ○hPa のところは,高度が h km,気温が t °C,‥‥」式の天気図になった。

    そして,一旦始めてしまった形は改められない。
    改めた後の手当てが甚大になるからである。
    つぎのことが改められないのと同様である:
    • 電流の方向──電子の流れの逆方向になっている
    • 電源周波数が西日本と東日本で違う
    • 鉄道の線路幅が狭い,会社や路線で違う


    実際,いまのラジオゾンデは,気圧計を乗せていない。
    高度を GPS で求め,気圧は高度から計算で求める,というやり方になっている。
    いまは,「高度○km 面天気図」をつくる方が直接的なのである。
    しかし,長く続いてきた「○hPa 面天気図」はいまさら変えられない,というわけ。