Up 学者の状況 : 要旨 作成: 2021-12-13
更新: 2021-12-13


      渡辺正 (2005)
    「 ‥‥ プロの温暖化研究者は、方向転換しにくいだろう。 それにね、かなり冷静に環境を語る人も、大物であればあるだけ、むかし語った温暖化論を、おいそれとは撤回できない」
    「研究費やメンツの問題かな‥‥」
    「うん。ハンセンもそうだろうが、コンピュータで勝負する方々はたいへんだ。 スーパーコンピュータは何十億円もするし、保守や計算もずいぶん経費を食う。 一回でも "心配ない" なんて言っちゃうと、とたんに研究費が来なくなってアウトさ」
    「メンツといえば、議定書のお膳立てをした手前、小学校のころ聴いた山本リンダじゃな いけど、"どうにも止まれなく" なっちゃった人たちも多いんでしょうね」

      渡辺正 (2007), pp.165,166.
    ‥‥ 研究開始段階で危険性のイメージのみが拡張されて一人歩きをしてしまうと、引っ込みがつかなくなる研究者が少なくないのが現状のようです。
    先ずは数千万円、億単位の予算を政府などからもらって研究を進めていくと、途中で大した危険性はないと判明しても、そういう事実を発表したら、もう予算が付かなくなるし、悪いニュースを待ち望んでいるマスコミの期待にも添えなくなる。
     実際、環境ホルモン問題の場合は、九八年度の補正予算で百数十億円の予算が付き、早速研究所が作られましたが、そうなると、もはや "環境ホルモン問題は大山鳴動鼠一匹程度の話でしかなかった" という事実を、腹の中で思っても口にできなくなってしまう。
    それこそ、危険であると言い続けないと予算が付かなくなるし、危険でないとなると予算の無駄遣いだったと批判されかねない。
    だから、科挙者の中には常に「危険だ」と言い続けなきゃ存立できなくなるジレンマがあるんです。

      同上, pp.166,167.
    最近、科学研究費の成果も、新聞やテレビに何度取り上げられたかで評価する傾向があって、ますますセンセーショナルな報道が増えてきているんです。
    研究者自身が、大した発見でもないことをもっともらしく新聞記者に話したり、マスコミも悪い暗いニュースは歓迎する傾向があるので、針小棒大に騒ぎ立てがちなんですよ。
    ですから、環境問題というのは、環境学の次元を超えて、心理学、政治学、経済学などさまざまな要因が付加され、客観的な科学的分析は蔑ろにされてしまっている側面もあります。


    悪玉を欲しがるマスコミに迎合してデマを発信する学者──彼らを論じるときも,このように相手に寄り添って論じることが肝要である。
    実際,「向こうもたいへん」なわけである。


    北大のアイヌ・先住民研究センターの員は,ずっと, 「アイヌ民族」「アイヌ=北海道先住民」の虚偽フレーズを唱え続けねばならない。
    新型コロナでマスコミに露出してしまった「専門家」は,ずっと,陽性反応者を「新規感染者」と言い直さねばならず,そしてワクチンは高い効果があると唱え続けねばならない。
    国立環境研究所の地球環境研究センターの員は,ずっと, 「地球温暖化」を CO2 元凶論で唱え続けねばならない。


    引用文献
    • 渡辺正 (2005) :『これからの環境論』, 日本評論社, 2005.
    • 渡辺正 (2007) :「"木を見て森を見ず" の環境危機論」
        所収 :『暴走する「地球温暖化」論,文藝春秋, 2007. pp.153-178.