Up 積乱雲の物理 作成: 2023-10-03
更新: 2023-10-03


    (1) 積乱雲の発生メカニズム

    条件1 : 強い上昇気流
     この場合,雲が発生する:
      上空は空気の密度が小さいので,上昇する空気は膨張する。
      この膨張で,上昇する空気は温度が下がる。
      この温度低下により,上昇する空気中の水蒸気が水になる。
      これは,雲が発生するということ。
    条件2 :上空は強い寒気
     この場合,雲は鉛直方向に著しく発達する:
      上昇する空気は温度を下げ,やがて周りの空気より冷たくなる。
      しかし上空の寒気が強く,上昇する空気はいつまでも周りの空気より温度が高い。
      温度が高いということは,密度が大きいということ。
      よって,条件1 で述べた雲の発生プロセスが,継続する。
      これは,雲が発達するということ。
        註. 大気がこのような状態にあることを,「大気の状態が不安定」と謂う。

    強い上昇気流がつくられる状況 (3通り):
    1. 強い日射
        過熱した地上付近の空気が,暖気となって上昇
    2. 寒冷前線
        寒気が暖気の下に潜り込み,暖気が持ち上げられる
    3. 大気の強い向心渦流
        中心に集まった空気の出口は上空──これは中心が強い上昇気流だということ


    (2) 積乱雲の構造
      フランクリン・ジャパン「積乱雲の一生」 から引用
    積雲が発達していくと雲頂がぼやけて筋状の雲(巻雲)が見られるようになります。
    この状態から積乱雲といわれ、これが雷雲です。
    雲頂の巻雲が強い風に流されて水平に拡がり、カナトコ状になる積乱雲もあります。
    雲頂は-20℃以下となり、水蒸気はほとんどが凝結して雨粒とあられや氷晶の数が増加します。
    氷晶は互いにくっつき合って大きくなり、やがて雪やあられに成長します。
    上昇流が強いと、あられはなかなか落下しません。
    あられや氷晶が上昇下降を繰り返し互いに衝突して電荷を帯びるようになります。
    このとき電荷の分離が起こり、軽い氷晶はプラスの電荷を帯びて上昇します。
    -10℃より低温のあられはマイナス、高温のあられはプラスの電荷を帯びて下降します。
    こうして雲の上部にプラスの電荷、-10℃以下の中層はマイナスの電荷、それより下の層はプラスの電荷に帯電します。
    あられ等は落下する途中で溶け、地上では雨が降り出します。
    それに引きずられるように下降流が生じます。
    雷も発生し、雨は一段と激しくなり、あられや雹を伴うこともあります。
    雨粒が蒸発することにより、気化熱を奪われて冷やされた空気は重くなり、下降流はさらに速度を増します。
    雲内では下降流域が次第に広がり、冷えた下降流は地面に到達すると周囲へと広がっていきます。
    この冷気の先端はガストフロントと言われ、ガストフロントの通過後は、冷気に覆われ、気温が急降下するとともに地上気圧は急上昇します。
    雨が継続するにつれ、下降流域は下層から拡がり、やがて雲全体に広がったときが最盛期の終了です。
    最盛期の持続時間は15〜30分程度で雲頂は十数kmに達することがあります。


    (3) 積乱雲の最期
      フランクリン・ジャパン「積乱雲の一生」 から引用
    下降流が雲全体に拡がり、上昇流がなくなると、衰弱期に入ります。
    この状態は20分程度続き、雨は弱まりやがて止みます
    地上では冷気が遠くまで拡がるため、暖かく湿った空気は冷気によって遮断されて、上昇流、降水もなくなるため、下降流も弱くなります。
    雲中の気温も外気温とほぼ等しくなり、風も収まり、積乱雲の一生が終わります。