Up 雲の存在論 作成: 2022-12-28
更新: 2022-12-28


    ひとは,目に見えているものを存在しているものにする。
    目に見えていないものは,存在していないものになってしまう。
    こうしてひとは,目に見えない存在を取りこぼす。

    この事情は,雲にもあてはまる。
    このことを知らせてくれるのが,衛星の赤外画像である。
    赤外画像は,可視画像では薄ぼんやりか何も無いように見えるところに,「雲」の存在を見せることがある。 ──その「雲」は,特に上層雲がこれと対応する。


    衛星の赤外画像は,衛星に届く赤外線の強度を,白(↔最も弱い) から黒(↔最も強い) までのグレー階調に変換して,可視化したものである。
    翻って,衛星の可視画像は,黒白画像の場合,衛星に届く可視光線の強度を,白(↔最も強い) から黒(↔最も弱い) までのグレー階調 (「明暗」) に変換して,可視化したものである。

    雲は,太陽から届く光の一部を上空に反射する。
    また,地上からの光が上空に向かうのを遮る。
    衛星画像の雲画像は,この2つの効果 (反射率と不透明度) が合わさったものである。
    そしてこの合成の模様が,可視光と赤外線で違ってくるというわけである。


    赤外画像が示す「雲」は,雲とすべきである。
    こうして雲は, 《可視光で見えている雲がすべてなのではない》となる。

    特に上層雲が,この場合になる。
    上層雲に対し「巻雲・巻積雲・巻層雲」の形状を当て嵌めているが,この当て嵌めはむしろミスリーディングだということになる。


    可視画像の雲画像は,<雲の厚さ>の模様である。 原理は :
      《可視光線は,雲が厚いほど遮蔽され,薄いほど透過する。》

    赤外画像の雲画像は,<雲の温度>の模様である。 原理は :
      《赤外線は,雲の温度が低いほどその雲に吸収されやすい。
       これは,赤外線がその雲に遮蔽されるということ。
       赤外線は,雲の温度が高いほどその雲に吸収されにくい。
       これは,赤外線がその雲を透過するいうこと。》


    衛星の赤外画像は,衛星に届く赤外線の強度を,白(↔最も弱い) から黒(↔最も強い) までのグレー階調に変換して,可視化したものであった。
    したがって,雲は温度が低いほどより白く表示されることになる。