Up 気象学は高・低気圧と偏西風の関係を転倒する 作成: 2022-12-14
更新: 2023-01-28


    天気予報は,つぎのように,<偏西風の蛇行>を今後の天気の兆候として用いている:
       kishounomoto
    南に蛇行した部分 (形状) をトラフと称しているので、基本的にトラフは北側の寒気を伴っています。‥‥
    気象庁は季節予報を発表していますが、1ヶ月予報では偏西風の蛇行の予測を利用しています。
    例えば、偏西風が南へ蛇行すると予想される場合は、気圧の谷が通過する(=高度が下がる)ので低温と予測します。

    <偏西風の蛇行>をこのように用いるのは,巻雲を雨の兆候として用いたりするのと同じであり,有効である。


    兆候は,それが示唆する物理の原因ではない。
    巻雲は,雨天の原因ではない。
    しかし気象学は,偏西風の蛇行を地上天気の原因に定めてしまう。
    つぎのように:
『気象ハンドブック』, p.122 から引用:


    <蛇行>の部分を詳しくすると:
<圧縮>は,下方が空気の逃げ場になる → 下降気流
<発散>は,下方から空気を吸い上げる → 上昇気流


    気象学のこの解釈は,間違いである。

    気象学の謂う「上層の低気圧・高気圧」は,上昇流・下降流の渦柱がこれの中身である。
    その渦柱は,支流に分岐しつつ地上とつながっている。
    気象学が「偏西風から生成される高気圧・低気圧」と思っているものは,「上層の低気圧・高気圧」の地上部分である。
    偏西風が生成しているわけではない。


    前線発生は,つぎの順序になる ( 前線発生のメカニズム ):
高気圧と低気圧が,高緯度側を上にしてそれぞれ左と右に隣り合わせ
これから導かれる空気の流れ

前線ができる

    一方,気象学はつぎの絵を描く:

    気象学のこの絵は,主従の転倒である。
    偏西風は対流渦束の縁(へり)であり,対流渦柱の間を縫って流れる空気の流れに過ぎない。
    しかし気象学は,《天気の兆候を天気の原因に取り違える》タイプの間違いとして,偏西風を天気の(あるじ)にしてしまうのである。



  • 引用文献
    • 朝倉正・他[編]『気象ハンドブック』, 朝倉書店, 1995.