Up 高層等圧面の傾き 作成: 2022-12-10
更新: 2023-01-29


    つぎは,2021-01-24 JST 21:00 の 500hPa 面天気図:
earth.nullschool.net
上昇流渦(左回り)と下降流渦(右回り) をそれぞれ白と黒で強調


AUXN 500 hPa
上に記した上昇流渦と下降流渦をそれぞれ赤と青の丸で表示


    北緯20度から北緯70度くらいまでの間が,南高北低の気圧模様になっている。


    気象学は,空気の流れを「気圧傾度力」で考える:
      空気は,気圧の高いところから低いところに流れる
    そこで,偏西風を「空気チューブ」の独自存在にしようとするとき,上の南高北低の気圧模様を問題にすることになる。
    即ち,「偏西風の空気チューブは気圧の坂の途中に止まったままを保つ」を説明せねならないと思うのである。

      偏西風は,鉛直対流渦束の縁(へり) である。
      気象学が立てる「偏西風の空気チューブは気圧の坂の途中に止まったままを保つ」は,本当は「鉛直対流渦束はその直径を保つ」である。
      考えるべきは鉛直対流渦束の平衡である。
      しかし,偏西風を「空気チューブ」の独自存在にする気象学は,「坂の途中にとどまらせている平衡」を捻り出そうとする。
      気象学のこの思考回路を,しっかり理解しよう。


    気象学は,「気圧傾度」をつぎの絵に表す:

    この絵は,描く本人が自分で自分を騙すことになってしまう騙し絵である。

    「気圧傾度」は,北緯20度から北緯70度くらいまでのことである。
    この間の距離は,
        1万km (地球一周の1/4) × (70 - 20 ) / 90 = 5556 km
    これに対し,上の AUXN 天気図に示される 500hPa 面の高度差は,大きく見積もっても
        6000m - 4500 m = 1.5 km
    5556 km に対する 1.5 km の比は,1/3704。
    これほどの傾斜は,問題になるものではない。
    即ち,気象のダイナミクスはこれと比べると圧倒的に大きい。


    しかし気象学にとって,「気圧傾度」は偏西風平衡論の要,偏西風を独自存在として立てる絶対的要である。

    気象学は,偏西風平衡論をつぎのようにつくる:
    1. 偏西風を補給しつつ駆動するものは,低緯度から気圧の傾斜を下りてくる空気である。
      この空気は,「角運動量保存」により気圧の傾斜を下りるにつれ高速になる。
      併せて,「コリオリ力」により進行方向の右に曲がる。
      こうして強い西風になる。
    2. 偏西風を気圧の傾斜の途中に留めているものも,「コリオリ力」である
      偏西風は進行方向と直角の力を,左側から受ける。
      これは,進行方向と直角の力を高緯度側から受けるということである。
      この力の支えによって,偏西風は気圧の坂を落ちないでいる。

    気象学が「気圧の坂の途中に偏西風を留める平衡」として思い描くのは,つぎの絵である:


    気象学は,「地衡風 (geostophic wind)」の名で,「気圧傾度力とコリオリ力の平衡の実現としての風」の概念を立てる。
    気象学の偏西風の位置づけは,「地衡風」である。