Up 北緯50度以北圏の鉛直対流 作成: 2023-01-22
更新: 2023-08-31


高緯度圏鉛直対流系
北半球高緯度圏鉛直対流の年間変化

500 hPa面 (地上約5.5km) 天気図
( earth.nullschool.net (気温) から引用)
2022-09-15, 21:00


    偏西風とは何かの話は,北緯50度以北の対流──上昇流と下降流の系──の話である。
    偏西風とは,この系の縁(ふち) の現象のことだからである。
    立体の面がそれ自体で存在するものでないように,偏西風はそれ自体で存在するものではない。


    上昇流と下降流の系である対流は,構造的に血液の動脈・静脈の流れに似るところがある。
    血液は,末梢からの静脈流が心臓で動脈流に切り替わって末梢に向かう。
    対流は,上昇流の終端となる上層部が下降流の始まりになる。
    上昇流と下降流がそれぞれ静脈と動脈に,地上と上層がそれぞれ<末梢>と<心臓>に対応するというわけである。
    単純化して絵に表すと,こんな具合である:
(上昇流・下降流を静脈・動脈に模すなら上昇流は青で下降流が赤になるところだが,一般に上昇流は暖気,下降流は寒気なので,それぞれ赤と青で表した。)


    並立する上昇流・下降流は,並立の平衡を実現することになる。
    現前の対流は,平衡を実現した形である。
    これは,特につぎのようになっている:
      《上昇流は左回りの渦,下降流は右回りの渦》

    上昇流が左で下降流が右であることに,物理学的意味はない。
    地球進化史上の偶然でこうなったということである。
    「互いに逆方向」──これがここの要点である。

     註: 「渦が右回りになるか左回りになるかは偶然」の「偶然」を,物理学は「創発 emergence」と呼んで片付ける。 実際,こんなふうに片づけるしか無いわけである。


    一般に,上昇流・下降流の並立の必要は,《上昇流と下降流が互いに逆方向回転の渦》を現すことになる。 ──確かに並立の合理的なソルーションになっている:
対流の断面図 (模式図)

    この対流は, 「ベナール対流」として研究されている。

    大気の対流は,きれいな形で紹介されるベナール対流とはほど遠いが,原理は同じである。
    上昇流・下降流の渦の並立模様が不規則で変動的なのは,流体としての空気の質と多様な攪乱の存在が理由である。


    天気図は,対流の断面図である。
    ──そのように見るべし。
2023-01-19 JST21 天気図
200 hPa 面 (AUPA 200 hPa)
上昇流に低気圧が対応 (低気圧の隙間や特に高気圧は, 下降流)。



250 hPa 面 (earth.nullschool.net)
北極が正面,東経135度線が縦
風向風速を可視化した図なので,渦の大きさ・強さ・回転方向がわかる。



500 hPa 面 (AUXN 500 hPa)
下層へ降りていくことは,支流 (断面として表示) の数が増え,並びが複雑になることである。